2009年 2月 10日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉63 及川彩子 ゴンドラの橋

     
   
     
  イタリア本土から、4キロの道で結ばれている水の都ヴェネチア。その終点がローマ広場。古都の玄関口で、車も鉄道もここまで。広場前は、大駐車場やバスターミナルです。

  運河を無数の橋が繋ぐこの街の交通手段は、徒歩かヴァボレットと呼ばれる水上バス、そしてゴンドラです。

  今年になって、ローマ広場と鉄道の終点サンタ・ルチア駅前を結ぶ新しい橋が開通、古い太鼓橋を、ガタガタ荷物を引いて歩いていた観光客には、とても便利になりました。

  ヨーロッパの古都は、景観を守るため、どの街でも、新しい建築物に論議は付きもの。パリのシンボル・エッフェル塔も、建築当時は、鉄骨むき出しのデザインが不評を買いました。

  案の定、ヴェネチアの新しい橋も賛否両論。「欄干のガラス張りは、ヴェネチアガラスのイメージ、段差の少ない階段は荷車の押しやすさ…などを計算し尽くした」と、建築家たちは言いますが、開通式のテレビ放送を一緒に見た友人たちも「無機質な感じ」と、そっけない感想です。

  私も、イタリアデザインにしては、どこか冷たい印象を抱いていたのですが、訪れて見ると、隠されていたヴェネチアならではの味わいに気付いたのです。

  新しい橋の風景は、一見、単なる運河にかかる橋に過ぎません。ところが、船で橋をくぐると、左右非対称にうねるゴンドラの船体が、橋の裏側全体にデザインされ、橋そのものがゴンドラなのでした〔写真〕。

  それがまた、ボッティチェリの名画「ヴィーナスの誕生」に描かれている貝のようでもあります。貝を彫って作る「カメオ」は、イタリアを代表する装飾品。新しい橋は、まさにアドリア海の女王です。

  表からは見えない真の姿。仮面で身分を隠し、浮かれ騒ぐカーニバルの街ならではの、粋な新名所が誕生したのです。

  (アジアゴ在住、盛岡市出身)

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