2009年 2月 11日 (水)

       

■ 〈都市の鼓動〜リレーコラム〉28 長澤幹 アーバン・ニューディールを

     
   
 
京都の街並み
 
  1929年のブラックマンデーを上回るリーマンショックに端を発した世界金融大恐慌に世界中が経済危機に見舞われている。各国は経済対策にテンヤワンヤだ。特筆されるのは、世界最大のCO2排出国の米国のオバマ新大統領が提唱するグリーン・ニューディールである。石油依存をグリーンエネルギー化しようとする試みだ。

  半面、日本は8割が必要と思っていないのに、国民全員に1人1.2万円バラ撒(ま)こうとする。経済対策は金をばら撒けば良いと言うものではない。少子高齢化と人口減少により国力が衰える前に、この国がやるべきことはある。今の日本がなすべきことは何か?福祉は大前提だが、日本の突破口がどこにあるのかを考えるとき、「都市再生」というキーワードか浮かぶ。これは日本が一番サボってきた分野の一つだ。ヨーロッパ各国の都市に比較して、比肩できる都市は京都ぐらいだ。

  日本でも戦国時代には、工夫を凝らした街づくりが行われた。織田信長・豊臣秀吉にしても徳川家康にしても一国を築くときに防衛や防災の知恵を絞り、経済・民生面も考慮しながら、ゼロから城下町をレイアウトした。

  しかし大風呂敷といわれた後藤新平以後、戦後60年、大都市は闇市以来の自然発生的な流れのまま形づくられてきて、政治家は都市づくりに手をつけてこなかった。豊かになっても、日本には世界に誇る街並みというものがない。なぜか?目先のことにとらわれ、日本の将来を考えるリーダーがいないことが、最大の原因だ。さらに日本人の性格で、街づくりのような個を超えた大事業に夢を持とうとしなかった。

  今、経済対策の大きな柱として安全・安心という国民の住環境に公金を振り向けて、21世紀に世界に誇れる都市を創っていくことが必要だ。都市環境の豊かさは文明国の証しだ。世界第2位の経済大国でありながら、日本では都市機能の充実が政治の中心から外されてきた。行政も住人も、自分たちがどれだけ危ない地盤や建物の中で暮らしているかを忘れている。

  近未来に向けた都市再生をやろうとすれば、アメリカのように世界中から借金せずに、中国のように農民から土地をだましとらなくても、日本は原資とニーズが国内に十分ある。唯一、足りないのは決意とビジョンだけだ。

  都市再生の事業は経済の多面的な分野に大きな影響を及ぼす。災いを転じる経済対策として、子々孫々から敬意と感謝をされる「アーバン・ルネサンス・インジャパン」に取り組む最大のチャンスが訪れている。

(建築家・技術士〔都市計画〕)

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