2009年 2月 14日 (土)

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉99 黒石山(くろいしやま)280メートル

     
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  お正月の晴れた日、黒石山に登った。奥羽山脈と北上山地にはさまれた穀倉地帯、紫波町。低山でありながら魅惑の大展望をもつ黒石山は、北上川と国道396号にはさまれた紫波町彦部地区の最高峰である。

  黒石山は山そのものが黒石大権現だ。その昔、山頂の「黒い岩塊」を祀(まつ)る信仰厚きお山だったという。山伏の修験道が盛んで、山ろくには四十八寺の寺が建っており宿坊をかねていたと伝わる。

  「彦部邨郷土誌」によると、享保21年(1736年)の大風雨により、大岩の下の「いたこ岩」が21カ所くだけ落ちた。それ以来さっぱり繁昌しなくなったとあるから、お山は想像を絶する神通力を発揮していたのだろう。

  見れば、新しいしめ縄で飾った岩塊に、ケース入りのミニ祠(ほこら)がちょこんと寄り添っていた。今年もまた地元では、紫波町のブランド米・ひめのモチで新しい年をお迎えし、豊年満作・家内安全を願う元旦参りを執り行っているようだった。黒い石には霊験あらたかな味わいがある。

  黒石山のハイライトは、何といっても大岩からの大展望である。360度見わたせるわけでもないのになぜかワイド感でいっぱいだ。耕地と並行して走る奥羽山脈。構図は1点透視でも2点透視でもない。何の変哲もない真一文字の空間なのだが、マツの枝が左右の拡散を抑えたことで、伸びやかな情景に仕立ててしまった。つまり、視野にスパッと収まった偶然が、この大画面を創ったのだ。

  がけ状に切り立つ西側はたいそう危険だけれど、祠の横から岩を回り込んで先端に立ってみよう。黒石大権現に護られたシンプルでワイドな平野が目の前にある。その爽快(そうかい)感は何にも負けやしない。
 
  黒石山へは、まず紫波町大巻の「丸ノ内工芸」へ行く。門の脇に立つ「黒石山登山道」に従いそのまま林道を進めば、1キロメートルで登り口の広場に着く。

  登り方は二つある。赤いテープを目印に、東へ急登する方法が一つ。20分程度で尾根に上がるので、ここから左方向へ平坦な尾根路を歩く。二つ目は急登せずに北側へ。チシマザサの生えた平坦な路(みち)をしばらくたどり、湿っぽい谷を巻くように登る。彦部山楽会が設置した方向指示板もありスムースに導かれる。

  どちらから登っても尾根上で路は合流。この先、路の真ん中に三等三角点が設置されている。要注意!うっかりするとコケてしまう。そこから黒い石を四つ五つ跳び越えれば、いよいよ頂上の黒石大権現にご対面だ。

  わたしも新年の願い事を…○×△□。おやまぁ、権現さんは「よっしゃ」だって。

  (版画家、盛岡市在住)

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