2009年 2月 18日 (水)

       

■ 〈都市の鼓動〜リレーコラム〉29 中村正 黒部渓谷の土木構築物

     
  黒部渓谷にかかる橋  
 
黒部渓谷にかかる橋
 
  深い渓谷を切り立った山肌に沿うように走るトロッコ電車に乗る。

  目前に迫る岩峰群に圧倒され、白く泡立つ激流を飽きることなく眺め続ける。

  そんな中、あんな所にと思われるような深い渓流に架かる水管橋らしきものに惹(ひ)かれた。緑にとけ込むような、地味だがどっしりとした存在感を示している。

  「サルがいる!サルだ!あそこ、あそこ」指さす方を見ると、激流に架かる梯子(はしご)状の吊(つ)り橋に数匹の親子らしいサルがいた。

  吊り橋は、ダム建設(黒四ではない。近年造られたもの)に伴い野生ザルの移動路を分断してしまった代償としてつくられたものであることが掲示されていた。

  昨年(平成20年)6月下旬、飲み仲間と黒部峡谷に行く機会を得た。

  年間100万人以上が訪れるという北アルプス立山黒部アルペンルート(信濃大町〜黒四ダム〜室堂)を経由し黒部川下流にある宇奈月温泉(黒部峡谷鉄道欅平)まで、2泊3日の物見遊山の旅である。

  ほとんど『醒(さ)めんつぁん』(常にアルコールが入っている)状態でありながら、景色の素晴しさはさておき、国立公園に指定された自然景観地内のさまざまな土木施設に触れ、その多くが昭和初期〜30年代につくられたものであるということを知り、先人の偉業にほとほと感動させられ放しの良い旅だった。

  黒部峡谷は立山連峰と後立山連峰の間に位置し、八千八谷(はっせんやたん)といわれるほど多くの沢(全てが険しい)を集め日本海富山湾に流出する暴れ川・黒部がつくる峡谷である。

  峰々は登山愛好家にとっては憧れの白馬山塊、立山山塊(北部北アルプス)であり、八千八谷は知る人ぞ知る、沢登り・ロッククライマーにとってその技量を表現する絶好の地となっている。

  一方、黒四ダム、黒四発電所は、小説に、映画に、舞台にその建設秘話が描かれ、多くの人々に夙(つと)に知られている。

  そんな黒部への旅は信濃大町扇沢から始まった。

  ダム・発電所建設のために造った後立山を横断するトンネルをトロリーバスで抜けると巨大なコンクリート構造物の黒四ダムに出た。(黒四発電所はダム下流に景観上の配慮もあって全地下式につくられており送電線の出口しか露出していないとのことで望見することもできない)。

  ダムサイトからは立山を横断する地下ケーブルカー、ロープウエイ、トロリーバス(トンネル)で室堂(むろどう)に至る。室堂からは立山有料道路(高原道路)のバス。弥陀ヶ原(高層湿原)で途中下車、木道を散策したりしてから美女平(びじょだいら・名前が良すぎる?)へ出た。

  ここから富山地方鉄道立山駅までケーブルカー。そして電車で宇奈月温泉へ。温泉からは黒部峡谷鉄道のトロッコ電車で黒部川本流沿いに欅平へ行った。

  山岳関係者は黒四ダムを境に上流を黒部上ノ廊下、下流を下ノ廊下と呼んでいる。今回の旅行参加の密かな狙いはこのことを目認することだった。黒四ダムサイトから、黒部峡谷鉄道(トロッコ電車)から
、そして本流の川原から、その山ひだの険しさ、渓谷の様を眼にしたとき、「言い得て妙」とうなずいた。

  一方、思いがけない大きな納得は、トンネル、ダム、ケーブルカー、ロープウエイ、高原道路、鉄道、橋梁、砂防施設といった土木インフラの恩恵を痛感したこと、そして自然景観地内における大型土木構造物のありよう、風景を創ることへのヒントが黒部にあることを知ったことである。

(ネクサス代表取締役)

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