2009年 2月 19日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉246 岩橋淳 「てんごくのおとうちゃん」

     
   
     
  作品のどこかしこに醸し出されるレトロな雰囲気。大雑把に見える画風の中に、びっしりと描きこまれた風俗、大真面目なひとびとの滑稽、そして人情。今週は、現在の絵本界に欠かせない作家の一人であり、本稿でも連載第1回以来何度となく採り上げてきた長谷川ワールドの原風景ともいうべき一冊をご紹介します。

  タイトルからすでに、主人公のおとうちゃんは亡いことが分かります。そして、訥々と手繰られる、記憶の断片。たまには叱られもしたけれど、楽しいこともたくさんあった。…それが気まぐれに買ってきた安物のウクレレでも、あるいは屋台で食べたホットドッグでも、長続きしなかったキャッチボールでも。ビッグイベントではなくっても、「おとうちゃんと」だったことが、「ぼく」のかけがえのない宝物になっている。そして、おとうちゃんが思いがけない近さで「ぼく」を見ていてくれることの、不思議さ。

  作者自身のことばにいわく、(絵本を描くようになって)せっかくやから、きっと、いつか、おとうちゃんのことを描こうと。絵本の中に、生きてほしいと。…そして、こう続くのです。よし、これでまた心おきなく、これからは、あほうな絵本描きます…。

 【今週の絵本】『てんごくのおとうちゃん』長谷川義史/作、講談社/刊、1575円(税込み)7歳〜(2008年)


本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします