2009年 2月 21日 (土)

       

■ 〈宮沢賢治の盛岡高農時代〉14 小川達雄 入学宣誓式14

    九、続・入学宣誓式

  盛岡高等農林学校の入学式で最も特徴的なのは、式の最後に行われる、この宣誓書署名である。そこには新入生に対して、この学校でたしかな農林業の道を学ぶ、強い自覚をうながす意義があった。

  新入生はひとりひとり進み出て、演壇下の長机に置かれた学籍簿に、心をこめて、毛筆で姓名を記した。これは「入学宣誓式」という呼称のとおりに、明治三十六年の開校以来受け継がれて来た、だいじな誓いの儀式である。

  その後、佐藤校長は閉式の旨を告げて、一同起立、敬礼。ついで校長退場。再び正面に現れた旗手は演壇から校旗を収めて、職員退場。続いて新入生が獣医科から退場して行き、この日の記念すべき宣誓式を閉じたのであった。

  わたしは盛岡に行くたびに、上田の岩手大学農学部を訪れて、いまに残された盛岡高農の本館を仰ぐ。それは創建以来七十年を経て老朽化したため、後援会及び教職員の浄財によって全面的に修復され、昭和五十五年からは農業教育資料館として蘇った建築である。

  そこは若き日の宮沢賢治が入学試験を受けた会場であり、また宣誓文をよく響く声で朗読した、感激の入学宣誓式が行われた式場であった。

  今回は、最後にその古い本館のスケッチを掲げたが、これは現在の資料館と、ほとんど同じ姿である。異なる箇所といえば、二階の窓に現在では両側に絞られたカーテンがあること、大きな植え込みの樹木は、現在イチイやドイツトウヒなどであること、くらいのものであろうか。

  わたしは昭和二十二年にこの盛岡高農(その時は盛岡農林専門学校と改称)に入学したが、調べているうちに、昭和二十年前後の試験、入学式も、なんと、賢治の時と同じ場所、ほぼ同じスタイルで、ということがわかって来た。これは最近、うれしく思うことの一つである。

  (この章、終)

  ※この章では、晴山信一、舟越昭治、小
   田四郎の各氏から、多くの教示をいた
   だきました。記して謝意を表します。

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