2009年 2月 24日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉64 及川彩子 アンティーク青空市

     
   
     
  ヨーロッパ名物の一つに、アンティーク品の青空市があります。通称「蚤(のみ)の市」。パリ・ミラノ・ローマなどの大都市には、世界中から業者やマニアが買い付けに来ると聞きます。

  ここアジアゴの土曜市でも、銀細工・装飾品・民族服など年代ものの品々が所狭しと並びますが、通のお目当ては、店の隅に山積みされた家具の山。汚れを取ると、見事な貝や寄木、大理石の歴史的モザイクなどが現れることがよくあるのだそうです。

  イタリアの中でも、ベネト州はアンティークの店が集中する地域として知られ、特にヴェネチア街道沿いには、千店以上ものアンティーク家具店があります。

  繁栄を極めたヴェネチア共和国が滅び、オーストリアに支配された19世紀、政府によって、ヴェネチア貴族愛用の伝統的家具の修復が奨励されました。以来、家具修復師の地位は、新進デザイナーより高いのだそうです。

  「アンティーク」と言うと、日本では「骨董」。値が張るぜいたく品と思われがちですが、イタリアではむしろ「年代物の中古品」。時代を感じさせるデザイン・ぬくもりが人気です。安息の場である部屋に相応しい家具、そのためにお金をかける人も少なくありません。

  わが家唯一のアンティークは、暖炉の火起こしに使う手動式ふいご。使い込まれた蛇腹状の革の柔らかさ…その存在だけで、周りの空気まで暖かく感じられるのです。

  近所のアントニアおばさんの家の家具は、先祖から受け継いた正真正銘のアンティーク。胡桃(くるみ)の一枚板の大テーブル、錫製ランプ、緞帳(どんちょう)のように重いじゅうたん、銅鍋、まきのかまど…よく見ると虫食い、歪みや傷だらけ。手入れも扱いも不便なものばかりですが「それを守るのが私の人生」と言い切るアントニア。

  アントニアと一緒に暮らす妹アンドレイナは、アジアゴの繁華街に世界アンティークの店を構え〔写真〕、収益をアフリカ難民に送り続けているのです。

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