2009年 2月 26日 (木)

       

■ 〈北Gのライブトーク〉76 北島貞紀 ジャズの初体験

 高校のクラスメートに一風変わった男がいた。とてもナイーブなのに、起こす行動がエキセントリックなのだ。ある日、彼が教室に入ってきたとき、どよめきが起こった。昨日まで普通の髪型だったのに、頭がツルツルとしている。今風に言えば、完全にスキンヘッドになっているのだ。「どうしたの?」訳を聞くと、短髪にしようと思って理髪店に行ったが、カットしているうちに、なんか中途半端な気がしてそってもらったという。

  周りの学生と見ているものが違うような印象があった。高みの位置とか、斜に構えるというのではなく、異邦人の目線といったらいいのかな。そんな彼と、なぜか親しくなった。

  ある日、岩手公園(今は盛岡城址公園)から橋を渡って、ある店に連れて行かれた。ちょっと薄暗くて異様な雰囲気がした。「今かかっているのは、コルトレーンっていうんだ」

  初めて飲んだアルコールとでもいえばよいのか、一言でいえば「不味(まず)い!」という感想だった。というより、何がなんだかさっぱり分からん、というのが正直なところだった。

  その後、彼とその店に行った記憶がない。ジャズの話もそれっきりだったような気がする。ところが僕は1人でその店に通った。相変わらず、その音楽のよさは分からなかった。でも好奇心の方が勝っていたのだろう。

  ある日、その店のカウンターでお姉さんたちが話していた。「やっぱり、マルっていいよね」そこに、僕は割り込んだ。「マルって、サンタナの弟でしょう?」(雑誌か何かで読んでいた)お姉さんたちは、怪訝(けげん)な顔をした。「マルっていうのは、ピアニストでマル・ウォドロンって言う人よ」

  今から、40年前の話である。そのお店は今、建物はあるが営業はしていない。時折その前を通ると、精いっぱい背伸びをしていたころの自分に会えそうな気がする。

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