2009年 2月 28日 (土)

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉100 東根山(あずまねさん、928メートル)

     
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  「東根山が紫波高校山岳部のホームグラウンドでしたよ」県立高校山岳部を長年率いてこられた今年82歳の中谷充先生は話す。生物、特に昆虫学がご専門なので、同じ所でどんな虫が観察できるかと、かれこれ50年もの長きにわたって東根山に通っておられる。当時の教え子らももう70歳に近いのに「おい、高木ッ」などと気安く呼び、ハイハイと山歩きに従っているのだからほほ笑ましい。

  トレーニングを積むなら、校舎で見渡せる東根山はもってこいである。初心者といえる生徒を信頼して送った東根山だ。登山口から2時間で頂上に達し、時間配分や練習メニューも難なくコントロールできよう。
 
  紫波町日詰と雫石町の境にある東根山は、四角張ったフォルムで重量感たっぷりである。「こたつ山」あるいは「吾妻峰」「吾妻根山」「四阿(あずま)」「袴腰山」「櫛形山」などと呼ばれるように、どこから見てもよく目立つ。

  春はカタクリやニリンソウの花々、緑あざやかな夏、秋の彩り。冬は雪漕ぎもちょくちょく体験できる。山と「顔なじみ」というのも変だが、体がカチンカチンに固まったとき「トレーニングにおいでよ」と、東根山は私を引きつける。すると決められたように私はラ・フランス温泉館横の登山口に立ってしまう。

  スギの植林地から進入し、やがて雑木の登山道となる。しっかりした路を、一の平、二の平、蛇石展望台から最後の一本杉をへて山頂に立つ。

  山頂の眺めはピカイチで、西側に岩手山、駒ケ岳、真昼山塊。須賀倉山の手前が西東根山だ。東に目を転じれば、黒森・朝島・鬼ケ瀬の大ケ生三山と続いて早池峰山の山並みを一望できる。眼下に、山王海ダムや新山をふかんし、広々とした田んぼが続いていく。

  山頂より北へ進むと「志波三山縦走コース」。10分で一等三角点の広場に着く。この先、南昌山、赤林山、箱ケ森へと全山縦走すれば10時間を越す長丁場なので、くれぐれも思いつきで行ってしまわないこと。

  途中、不動岳から田沢山を経て秋津神社に下る、もしくは南昌山との鞍部から矢巾温泉に下る、さらに箱ケ森の手前から(株)岩鋳の工場へ下るなど、いく通りもコースがあるので、よく計画を立てて行動しよう。

  また、水分神社の尾根を登ることもできるが、下るより登りの方が分かりやすい。急登のうえ踏み跡がはっきりしないので、数人でトライすると面白い。

  私はとくと観察して100番目のスケッチに没頭した。「若人よ、体を鍛えよ」−東根山の覇気が高らかに木霊(こだま)した。

(版画家、盛岡市在住)

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