2009年 5月 6日 (水)

       

■ 〈都市の鼓動〉40 中澤昭典 「リスクとベネフィット考」

     
  中津川沿いの散策路。与の字橋から中の橋方向を眺める  
 
中津川沿いの散策路。与の字橋から中の橋方向を眺める
 
  環境問題を論じる時「リスク/ベネフィット論」という手法がある。

  有名な「サッカリン論争」では、サッカリンに弱い発ガン作用があることから、これを使用禁止にしようとしたところ、サッカリンを使わず砂糖を使用すると、糖尿病や肥満のリスクが増大するとの反論が起こり、結局サッカリンは今でも使用可能となっている。

  また「アメリカでは、1回横断歩道を渡るごとに、13秒寿命が短縮していくと計算されている」と聞いたことがある。歩道橋を渡ればそのリスクは回避できることになるが、車に跳ねられない13秒の寿命短縮回避というベネフィット(利益)のために階段の上り下りを選ぶか、思案のしどころである。

  さて、都市の問題には様々な「リスク/ベネフィット」が存在する。

  ゾーニングという機能分離型都市計画による、効率化というベネフィットが、単機能のニュータウンを造り、一斉高齢化、空き家の増加というリスクを生み出した。

  京都や札幌など碁盤の目のような都市計画は、分かりやすいというベネフィットの反面、住んでいて味気なく面白みに欠けるというリスクを内在する。

  市街地の車の混雑解消というベネフィットを得るためにバイパス道路を建設すると、バイパス沿いにロードサイト大型店の立地を誘発し、市街地の空洞化を招くというリスクを負うことになった。

  洪水というリスクを防ぐためコンクリートの直線的な川を造ると、水辺環境というベネフィットを低下させる。

  「街に緑を」というベネフィットの向上は、落ち葉対策というリスクも向上させる。
 
  人間はベネフィット(利便性)を追い求めることには熱心であるが、その裏にあるリスク(不利益)を取る事には当然ながら関心は薄い。しかしベネフィット(利便性)の追及には必ずリスク(危険性)もワンセットでついて回る。
 
  盛岡の中心部を流れる中津川の川沿いの道路には柵がほとんどない。我々市民は、道路から河原に転落するリスクを容認することで、川沿いの素晴らしい景観を享受している。
 
  都市の問題を解決し、快適な生活環境を造り出すためには、様々なリスクを軽減することはもちろん必要であるが、しかし、リスクにばかり目を奪われて、これを無くそうとし過ぎると、整然として、安全で 、便利で、効率的だが、窮屈で、退屈で、味気なくて、住む気がしない街をつくりあげるリスクを負うことも認識しておかなければならない。
(技術士)

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