2009年 5月 11日 (月)

       

■ 〈畜産岩手のチカラ〉第4部 商品力高める連携へ 雫石町の松原さんの取り組み

     
  酪農の分野で6次産業化に取り組む松原久美さん、たみえさん夫妻  
 
酪農の分野で6次産業化に取り組む
松原久美さん、たみえさん夫妻
 
  本県は全国の農業産出額における畜産部門で北海道、鹿児島県、宮崎県に次いで第4位。全国有数の畜産県だ。広い県土と豊かな自然に恵まれた中から生まれる畜産物は、安全・安心と高品質を兼ね備えた素地を持つ。だが、日本の畜産業は概して厳しい経営環境に置かれている。その環境を変え、振興していくには生産者側の努力だけでは及ばない。消費者に目を向けてもらうためには行政、加工、流通がそれぞれの立場で連携していくことが重要不可欠。第4部では生産から消費までの流れの中から本県の畜産を展望する。(全6回)

  雫石町長山の松原久美さん(58)、たみえさん(56)夫妻は、家族とともに生産だけでなく加工、流通、販売などを総合的に行い事業の付加価値を高める6次産業化に取り組んできた。01年に開店したアイスクリーム工房「松ぼっくり」は、自家生乳を使ったアイスが人気で県内外から大勢が来客する。

  68年に就農した久美さんは当初、わずか2頭の乳牛から酪農を始めた。当時は生産した生乳を系統販売していた。一つの転機となったのがヨーロッパへの研修。「加工するというスタイルが印象に残った」。チーズやハム、ソーセージなどの加工を伴った畜産に興味を覚えた。

  就農したときは毎年少しずつ上がっていた乳価も次第に下がり始めた。具体的に何を作りたいという思いはなかったが、「日本の牛乳は生産過剰で何か牛乳に付加価値を付けないと利益が生まれない」という思いもあった。

  北海道で行われた牛の共進会の会場で簡単なアイスクリームの機械を見つけ、たみえさんへの土産として購入して帰ったことが出店のきっかけになった。最初は自分たちで食べる分を作っていたが、近所にもあげるようになり、味も次第に仕上がってきた。

  北海道での研修を終えた長男(35)が酪農を手伝うことになったことを契機に01年、松ぼっくりを開店。酪農を任せられる後継者がいたことも加工分野に踏み出す大きな一歩となった。現在は家族協定を結び、牛舎の仕事は長男に任せる。04年には二男(31)が責任者として管理運営する産直「松の実」も開店した。

  順調に加工・販売の方が進んできたが、「本業は農業ということを忘れたくない。本業もきちんと経営していかないと加工の部分ばかりに頼っては駄目」と話す久美さん。あくまでも経営の柱は酪農と農業。消費者を裏切らない格好で生産しなければならないため、労働の部分に余裕がある人でなければどちらもおろそかになってしまう。

  酪農に携わる人で加工もやりたいと思う人は多い。一方、スタートしてすぐ利益が出ればいいが、現実はそう甘くはない。

  ある程度の雇用を使えるくらいの事業にしていかないと買う側にも浸透しない。資金面や税金などで行政の支援がなければ新たに挑戦したい人にとって大きな障壁となる。久美さんは「小中規模の農家が胸を張ってできるような体制ができれば」と話す。

(泉山圭記者)

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