2009年 5月 16日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉15 望月善次 海鹿島、銚子岬に

 海鹿島(アシカジマ)、銚子岬に行く
  として菜の花に降る銀雨を過ぐ
 
  〔現代語訳〕海鹿島や銚子岬に行こうとして、菜の花に降る銀のような雨の中を通ったのです。

  〔評釈〕「春日哀愁篇」十七首〔『アザリア』第1号〕の十五首目。「海鹿島(アシカジマ)」の「アシカジマ」のルビは原文のもの。「海鹿島」は、千葉県の地名。犬吠埼近くの島で、磯めぐりなどで知られる。明治中期までアシカ(海馬)が生息していたことによる地名だという。「銚子岬」は、同じく千葉県の地名で「九十九里浜」の北端の岬。近接する二つの地名を連ねながら、その途中に「(千葉の春の風物詩でもある)菜の花」に降る銀雨を配していて、そうした意味では技巧的な作品とも言える。嘉内が、そうした技巧をどの程度意識していたかは別として、こうした技巧を使える力量は持っていたことには留意しておかねばなるまい。ところで、「銀雨(ぎんさめ)」は「銀のような雨」であるのだが、松山千春の「銀の雨」やトミー・ウォーカーのウェブ・ゲーム「シルバーレイン(silver rain)」を目の当たりにしたら、嘉内はどんな感想を持つのだろうか。聞いてみたいような気もする。
  (盛岡大学長)

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