2009年 5月 20日 (水)

       

■ 〈都市の鼓動〜リレーコラム〉42 服部尚樹 名勝「盛岡クリスマスツリー」の運命

     
  貴重な旧県立図書館前の盛岡クリスマスツリーの並木  
 
貴重な旧県立図書館前の盛岡クリスマスツリーの並木
 
  どんな都市にも目印になるような建築物や空間があります。ランドマークと言います。

  東京タワーがその典型です。ランドマークは都市の象徴的な「顔」となって、住民に親しまれ、来訪者に強い印象を与えます。

  盛岡市のランドマークは、何でしょうか?マリオス?石割桜?

  私にとってのランドマークは「岩山」です。街から見ると、さほど高い山ではないですが、登ってみてビックリ。岩手山と正面から向き合っているくらい、高くて大きな場所に感じてしまいます。

  さて、マーケティングの理論としてとっても大事なことがあります。それは、「他所(よそ)には無いもの」を売り出すということです。地場産品を開発しているのは、そういうことですね。観光都市として街を「売り出す」時も応用できます。「よそにはない盛岡」を発見して強調することです。そして、そこにストーリーを付けてあげる。

     
  中の橋から下流に望める赤林山  
 
中の橋から下流に望める赤林山
 
  たとえば、中の橋から見る景観が「よそにはない盛岡」です。中の橋から上流のほうを見ると、遠くに形のいい山が見えます。啄木のふるさとの山、姫神山でした。中の橋から下流のほうを見ると、遠くに赤林山などの紫波三山が見えます。私はこの景色が好きです。見ていると不思議な気がします。

  それで、はたと思い当たったことです。江戸時代も縄文時代も、ここで暮らした人は同じ景色を見て来たはずです。ここだけは景観の破壊がないからです。ということは、今の人と大昔の人が、ここ中の橋で、つながることができる。「太古の人とつながる橋・中の橋」。

     
  中の橋から上流を望むと姫神山が見える  
 
中の橋から上流を望むと姫神山が見える
 
  さらにもう一つ、「よそにはない盛岡」が近くにありました。旧県立図書館の前にある並木です。この並木は、県庁前の並木とならんで、盛岡市の自然遺産だと思います。

  東北の都市で、これだけの並木を中心市街地に持っている街はほかにあるでしょうか?以前、秋田に行ったとき、市街地に並木がほとんどないのを見て、盛岡はすばらしいと思いました。

  ところが、最近の報道で知ったのです。この並木が伐採されるそうです。理由は、外構を開放的にすることで施設を観光客の目に触れやすくして集客効果を高めることが狙い、だとか。マーケティングの観点からなんですね。

  でもね、樹齢40年の並木ですよ。歴史文化施設ならその歴史遺産を利用しない手はありません。何より、中心市街地にあるこの並木は、観光客を驚かせ、心をなごませます。それに、施設の集客効果は、施設そのものの魅力を高めることが一番大事です。

  施設の前の自然遺産をなぎ倒してでも、施設の姿を見通せるようにすることは、逆に、観光客を失望させるかもしれません。市街地の保存並木をあっという間に伐採してしまった街の残酷さに。知り合いが言いました。「片手に花のバスケットを持って、もう一方の手には、チェンソーを持っているのか」って。

  大型観光バスの進入路を作るためとの説明もあるようですが、知り合いの主婦が言いました。「すでに川沿いの駐車スペースに観光バスを何台も乗り付けている」

  確かに修学旅行バスをよく見かけます。もっと必要ならば、そちら側から回り込めば正面に何台も停められるのではないでしょうか。開館は平成23年度だというのに、ウサギさん、そんなに急いでどこへ行く?

  大雪の日にあの並木を見たとき、シビレるほど美しかった。並木は、クリスマスツリーになっていました。

  盛岡のもう一つのランドマークは、旧県立図書館の前にある並木なのでした。あれは、名勝「盛岡クリスマスツリー」なのです。

  今年のクリスマスの日に君が生きていたら、リボンで飾ってあげますね。もしもダメだったらゴメンね。
  (行政書士・マーケティングアドバイザー)

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