2009年 5月 27日 (水)

       

■ 〈都市の鼓動〜リレーコラム〉42 中村正 住宅地の価値高める「6インチルール」

     
  ペンシルバニアのエフラタ  
 
ペンシルバニアのエフラタ
 
  長女がUSAペンシルバニア州に行って5年が過ぎた。グリーンカードも取得し、ドイツ系土着人と結婚。今は人口3万人くらいのエフラタという田舎町に居る。どうやら永住を決めたようである。

  その娘と話をしていて面白いことを知らされた。

  道路に面した庭の草丈が6インチ(約18センチ)を越えると「草刈りをするように」との張り紙をされるというのである。またバーベキュー跡など何日も乱雑にしたままにしていると、環境監視委員(指導員)が「町の価値に傷が付きます」と注意して歩くというのである。

  景観条例のようなものがあり美観を守るためのルールだとのことだった。

  そしてこれらを借家人などに対しても実効性のあるものにしている一つに「家賃の中に除雪や草刈りの費用負担について家主との間で取り決めができる」ことがあるというのだ。

  家の前の歩道の除雪や、道路に面した庭の除草など「町の価値に傷を付けないためのコミュニティー活動に係わる事柄は基本的に家主の責務で、家賃に含まれている。借家人がそれを行う場合は家賃の減額を申し入れることができ、多くの場合認められる(もちろん当初契約の段階で盛り込まれるケースもある)」というのである。

  いかにも契約社会といってしまえばそうだが、ここではアメリカ人気質の一つに「誉められるのがとりわけ好き」があるらしく、「きれいな町に住んでいますね(お家をお持ちですね)」「美しい町ですね」と言われるのに弱いようだ。とのことに留めたい。

  翻って私たち日本人は、やっぱり「誉められるのが好きで、美しい日本、落ち着ける郷土」などに弱い。

  「弱い」は「価値を認めている証」といって良いと思う。

  盛岡では住宅団地における空き家、空き地の増加が様々な面で問題をはらみ「空き家は不安だ」「やぶ、荒れ地が見苦しい」など一部は顕在化しつつあり、このまま手をこまねいていると全体の評価が下落してしまいそうだとも言われている。

  空き家、空き地をあまり利に結びつけた活用に資することに執着せず、単純に「きれいにする、これまでを保つことに取り組み、残る住宅地の価値を傷つけないようにする」活動を始めてはどうだろうか。地道な活動が、意外に「ゆとりある美しい住宅地」として再評価される契機につながるかもしれない。

  不在地主等の空き地は自治会等による協働作業、あるいは委託(不在地主等には費用負担を求める)といった方策を工夫しながら「団地としての価値、そして個々有の住宅の価値を保つ、あるいは向上させる」不断の活動の一つとして「6インチルール」は参考になる事例と思える。

(都市デザイン総合研究センター理事)

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