2009年 5月 31日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉218 八重嶋勲 目下身体の健康はどうであるか

 ■286半罫紙 明治41年10月30日付

宛 東京市麹町区飯田町四丁目三十一、
               日松館内
発 岩手縣紫波郡彦部村
前畧過日金弐拾円送金セシトキ日松館ノ号ヲ落記シ東京配達局ニテ定メテ困難シ或ハ戻リ来ルナラント想像致居候得共未タ何等ナキハ定メテ受領セシナラン、残金三拾円余目下金配中ナレ共纒メ兼子居候、今明日中ニ送金スルコトゝ可致候、岩亀郡長ヘ答礼状至急送付セラレ度、本事業即チ機業ハ紫波郡ノ特業ニシテ専ラ岩亀ノ特殊働キナルモノナリ、其邊宜敷様文意ニ綴ラレ度候、尤岩亀ハ其答礼状ヲ受シナラ履歴同様ニ調法スルナラント想ヘ(ヒ)居候、同人ハ今江刺郡長トシテアリ、常ニ紫波機業開始ホコリ居ル由ナリ、送付ノトキハ本紙岩亀ヨリ来ルモノトモ送付セラレ度候、
一新刑法講儀(義)付壱冊
一ハ刑法施行法  壱冊官法 四十一年             三月廿七日
一ハ警察犯處罰令 壱冊〃〃九月廿九日
右講儀(義)会用トシテ可相成クハヲキモノ入用ニ候間何程位ニテ購入得ラルゝヤ折返シ回答被成度、役場ヨリ壱円以上弐円以下ノモノハ直様送金シテ買受方ヲ頼ム筈ニ候、
一彦部学校ハ目下増築引移着手中ナリ、
一佐藤善太郎ハ来ル十一月廿九日弘前ヘ 歩兵トシテ出発ノ筈ニ候、
一目下身体健康如何アルヤ、
一学校ニ日々無欠席ナルヤ、将タ出校ハ 一週何日位ナルヤ、
一本年試験受ケサルトキハ大学卆業セス シテ徴兵ニ召集セラルゝニアラスヤ、
一受業料納メタルヤ、
一夜具ヲ購入セシヤ、
一今モ演説会ニ出テサルヤ、
一耕次郎ハ日々農事ニ従事シ居レリ、
一章モ日々学校ニ通学シアリ、
一たみ、みき小供等モ壮健ナリ、
一親類中ニ異状ナシ、
右用事迄、早々
       野村長四郎
  長一殿
 
  【解説】「前略、過日20円送金したとき日松館を書き落し、東京配達局できっと困難し、あるいは戻ってくるのではないかと想像していたが、いまだ何らないのはきっと受領したのであろう。

  残金30円余は、目下金策中であるがまとめかねている。今明日中に送金することとする。岩亀郡長への答礼状至急送付してほしい。本事業即ち機業は紫波郡の特別産業で専ら岩亀前郡長の特殊な働きがあってなったものである。その辺よろしいように文意につづるようにしてほしい。もっとも岩亀前郡長はその答礼状を受けたなら、履歴同様に調法するだろうと想っている。

  同人は今江刺郡長である。常に紫波の機業開始を誇っているということである。返してよこす時は、書いた答礼状と岩亀郡長からきた文書も一緒に送付してほしい。

一、新刑法講義付 1冊
一、刑法施行法  1冊官法 41年3月27日
一、警察犯處罰令 1冊同同9月29日

  右は講義会用としてなるべく置きたいものであるので、どのくらいの値段で購入できるものか折り返し回答してほしい。役場から1円以上2円以下のものは直様送金して買い受け方を頼むはずである。

一、彦部学校は目下増築引き移りに着手中である。
一、佐藤善太郎は来る11月29日、弘前へ歩兵として出発のはずである。
一、目下身体の健康はどうであるか。
一、学校は日々無欠席であるか。また出校は1週何日位か。
一、本年試験を受けなければ大学を卒業できないので徴兵召集になるのではないか。
一、受業料を納めたか。
一、夜具を購入したか。
一、今も演説会に出ていないのか。
一、耕次郎は日々農事に従事している。
一、章も日々学校に通学している。
一、たみ江、みき、子供らも壮健である。
一、親類中に異状はない。

  右用事まで、早々」という内容。

  機織業を紫波郡へ導入するため尽力した紫波郡岩亀前郡長に、何らかの答礼状をしたためなければならず、長一にその文章をまとめるよう頼んだのであろう。最高学府に学ぶ、長一を頼りにしているところに、父の愛情と誇りが表われている。
(県歌人クラブ副会長兼事務局長)

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