2009年 6月 2日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉21 望月善次 三本のどろの木に

 三本のどろの木に出て幹に入る鈍銀の
  空 鈍銀の空。
 
  〔現代語訳〕鈍い銀色の空は、三本のドロノキから出て、幹に入るように思われます。ああ、この鈍い銀色の空よ。

  〔評釈〕「六月草原篇」十首〔『アザリア会雑誌』第一号(盛岡高等農林アザリア会、大正六年七月一日)〕の四首目。前に置かれた「どろの木は三本立ちて鈍銀(にぶぎん)の空に向へり 女はたらき」に続いて、「三本のどろの木」と「鈍銀の空」を素材としている。前の作品が、(恐らく目の前にある)「三本のどろの木」が、「鈍銀の空」に向っている様と、(こちらも想像だが)そのドロの木の近くにいる「女」を対照的にとらえているのに対し、抽出歌においては、「三本のどろの木」と「鈍銀の空」との関係に集約して作品化しようとしている。「鈍銀の空」が「三本のどろの木」から出て「幹に入る」という把握の仕方は、話者の独自のとらえ方で注目して良い点であろう。なお、こうした表現は、比喩(ゆ)の点から言えば、「結合比喩」に相当するのだが、この「結合比喩」こそは、賢治の表現技法の中核をなすものであり、(第四、五句の「鈍銀の空」のリフレインとともに)その点からも注目した。

  (盛岡大学長)

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