2009年 6月 3日 (水)

       

■ インフルエンザワクチンの量産化目指す 岩手医大・佐藤教授のグループ

     
  インフルエンザワクチンの産生に適した細胞培養法の研究に取り組む岩手医大細菌学講座の佐藤成大教授  
 
インフルエンザワクチンの産生に適した細胞培養法の研究に取り組む岩手医大細菌学講座の
佐藤成大教授
 
  岩手医科大学細菌学講座の佐藤成大教授(60)らのグループは、JST(科学技術振興機構)の研究支援を受け、インフルエンザワクチンの量産に適した新しい細胞培養法の研究に取り組んでいる。開発しているのはイヌの腎臓の細胞に由来する新しい細胞株を使い、ワクチンのもとになるインフルエンザウイルスを短期間で増殖させる技術。事業化されれば、大量のワクチンを安価で迅速に供給することが可能になる。新型の豚インフルエンザの感染拡大で、ワクチン量産が緊急課題となっており成果が注目される。

  佐藤教授らは、インフルエンザウイルスの培地となる新しい細胞株を培養液の中で浮遊させながら大量に増やす技術の開発を進めている。細胞は通常、平面にへばりつくように増殖するが、新しい細胞株は培養液の中で浮いた状態でも安定して増殖する特徴を持つ。イヌの腎臓尿細管上皮細胞由来の細胞株に、ある酵素を加え、培養を繰り返すことで新しい細胞株の選別に成功した。

  この細胞は3カ月程度、ウイルスを培養する機能を持ち続ける。あらかじめ十分な量のワクチン産生用細胞を準備しておけば、必要な時に必要な量のワクチンを製造することも可能だ。

  一般的にインフルエンザワクチンは鶏の有精卵で培養して製造する。1人分のワクチンを作るのに有精卵2個以上が必要で完成までに4〜5カ月かかる。このため、新型インフルエンザが短期間で世界的に流行すると、ワクチン製造が追いつかなくなる危険性が指摘されてきた。

  新しい細胞株を使った培養法であれば、大型タンクなどでインフルエンザウイルスを一気に培養することができるため、ワクチン製造期間を1カ月程度に短縮できる。1人当たり4千円程度と推測されるワクチンの市場価格も4分の1以下にコストダウンできると試算している。ほ乳類の培養細胞のため、鶏卵培養に比べて人間に対するストレスが少なく、アレルギーも起こりにくいと考えられる。

  新しい細胞株の特性と培養方法は9月をめどに特許申請の予定。今後は新しい細胞株の安全性や再現性について検証を進める。ワクチン製造の技術移転についてメーカー数社と交渉中だ。細胞を特徴づける遺伝子発現の解析には盛岡市の東北化学薬品生命システム情報研究所も協力している。

  佐藤教授によると、インフルエンザワクチンのもとになるウイルスの培養技術やコストは企業秘密の部分が大きく、正確な情報は表に出てきにくい。新型インフルエンザの感染拡大が現実のものとなり、メーカー間の競争はさらに激しさを増すという。

  「実際のワクチン製造にこぎつけるためにはコストがポイントになる。発展途上国でも安心して使えるような値段のワクチン製造を目指したい」と意欲を燃やす。

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