2009年 6月 13日 (土)

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉107 須賀倉山(すがくらやま、940メートル)

     
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 「紫波郡内の最高峰はどこでしょう」。

  この問いに、東根山を思い浮かべた方は残念ながら、ハズレである。では、いったいどこ〜?と、頭の体操で「クイズ・紫波町サミット」に迫ってみよう。

  ヒント、「紫波町と雫石町の境に位置している」。二つ目のヒント、「山王海ダムより西、滝名川の源頭」。これでピンとくれば、過去に登ったことがあるか、もしくはかなり地理に通ずる方であろう。東根山とたった13メートルの差だが、背比べには決定的な数字となる。正解は−標高940メートルの須賀倉山(すがくらやま)だ。

  雫石町側から見た山体は、なだらかな稜線をゆるゆる描く。東の紫波町側からは、コタツ形の東根山が大きく邪魔するため、見えそうでいてさっぱりだ。山王海ダム湖の奥、滝名川の支流である潟安沢へ分け入って初めて、それまで控え目だった須賀倉山が、巨大化した昆虫のように現れる。

  それは、やれやれと振り向きざまだった。トンボの複眼らしきミドリ色の幾何学ゾーンが2つ、私を射すくめた。よくよく見ると、崖崩れ防止ネットのようにスギの植林地が張りついていたにすぎなかったのだが…。

  須賀倉山の名には「崖」を意味する「倉」が付く。眺めると、南面は険しく切り立っている。1本だともちこたえられない樹木が、十本、百本、千本とスクラムを組むことで要塞化される。
 
  「木の実は動物に、用材は人に」−こんなうたい文句の「平成の森」を通過、快適だった舗装道もやがて作業道に変わる。どこからともなくスギの芳香だ。この辺りは登山の対象というよりは、活きた林業の山域らしい。

  雫石町大村との分岐を右折し、スギの植林地を1・5キロメートルばかり行くと鍵掛峠への入り口に着くので、古い看板「カタのヤスザワ」を目印に右の林道へ進入。1キロメートル進んだ標高500メートルあたりで駐車すること。その先林道は崖崩れや落石で狭まり、しだいに山道へと変わっていく。ヘアピンカーブで沢を回り込み、ジグザグに折れながら高度を稼ぐ。   

  832メートル点から伸びた尾根上に、地図には記載されない快適な路(みち)がある。カタクリやイチゲの花が咲く明るい雑木林だ。路なりに登り、下りになる手前で北へ30メートルヤブをこぐ。クロビと岩が混在した山頂部は、湿っぽいとんがり帽子をかぶったように林層をがらりと変える。ひとりぼっちで待つ2等三角点を探しあてよう。往路2時間かかる。

  私はトンボの大目玉で苦笑いしたが、植林ゾーンをほかになんと見立てる?

(版画家、盛岡市在住)


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