2009年 6月 18日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉263 岩橋淳 「悲しい本SAD BOOK」

     
   
     
  父の日が、近づいてまいりました。

  今週の一冊は、お父さんをたたえる本のご紹介ではありません。

  最愛の息子を喪(うしな)った、ひとりの父親のモノローグ。作者は、イギリスの詩人。ユーモア路線の絵本の原作も何冊か手がけていますが、本作は、趣が異なります。それは、恐らくはこれが彼の実体験から生まれたものであろうことが、感じられるからです。

  冒頭、「幸せなふりをしている私」の笑顔、次のページには、ぴたりと重なるように描かれた、悲しみに沈む真実の顔。暗く開いた穴のような眼。

  怒り、嘆き、時に奇行に奔る。母親を見送った時にも似た、限りない喪失感。なぜ悲しいのかさえ、解らなくなることもある。そんなことを繰り返しながらも、「私」は、悲しみについて考える。書く。作家としての業が、そうさせるのかもしれない。そして、消えうせてしまいたいと思いながらも、悲しみとともに、生きている自分を見いだす…。

  「私」が、この悲しみから解放されることは、ないでしょう。親にとっての、子。子にとっての、親。絆(きずな)という一文字の重み、深さを、あらためて思わずにはいられません。

  【今週の絵本】『悲しい本SAD BOOK』M・ローゼン/作、Q・ブレイク/絵、谷川俊太郎/訳、あかね書房/刊、1470円(税込み)(2004年)

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