2009年 6月 18日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉28 望月善次 大空があんまり高く

 大空があんまり青く、はれたればおそ
  ろしくなりて、ふたゝび仰がず
 
  〔現代語訳〕大空があまりにも青く晴れたので、怖ろしくなって、二度と仰がなかったのです。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の一首目。力作三十二首の冒頭歌で、気合いの入れ様も相当な一首。まず、題名の「大空がまったく晴れておそろしや(大空が、完全のはれて怖ろしいなぁ)」がユニーク。しかも続く以下の六首共、各作品の出だしがいずれも「大空(が/は/の/に)」と始まる。晴れ渡った大空に対して、三十二首で構成できること、また、その各首の冒頭を「大空(が/は/の/に)」という共通の語句によって始めることができるのは、嘉内の短歌的力量が、既に一定以上のものであったことを示している。空があまりにも晴れたので、それに対してある種の恐怖感が生じ、だから、再びは(空を)仰がなかったというのは、科学的な判断というより、ちょっとした話者の側からの理屈。つまりは、理性よりも感性が前面に出た作品で、その感性の独特さが〈作品〉を保証する。

(盛岡大学長)

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