2009年 6月 19日 (金)

       

■ 〈杜陵随想〉福島敬次郎 みずを食べる

 日が少しだけ当たる庭の片隅をわざわざ選んで、移植しているみずは今が旬である。

  まっ白な花をつけてから一週間ほどがたち茎もだいぶ太くなって食べごろ十分である。

  早速ゴム手袋をはめて密生を分けながら、太い茎だけを選んで抜き取る。右手だけを使うと側の細い方の茎までも一緒するから左手で周辺のみずを押さえつけて、お目当ての一本一本をぽっと引っ張る。

  かすかにぷつっと耳にとどく。快く望みの一本一本が抜けてくる。

  いよいよ下ごしらえである。一本ごとのみずの葉っぱを下四つは残して、上部の葉っぱはすべてちぎってしまう。外玄関の水道に運ぶ。茎を食するのだから皮取りは欠かせない。この作業はなかなか厄介である。子供時分におふくろがやっていた技を思い起こして、互生の葉っぱを根元に向けて静かに引っぱると皮がくっついてくる。続けて根元を指で、ぐじゅっぐじゅっとつぶして皮だけをつまんでゆっくり上方に引っぱると皮が取れる。これで下方からと上方からで一本の皮取りは完了である。

  手元のみずは50本で100回繰り返すことになるから皮取りは根気を要する。

  さて、台所でゆでる段になるが、包丁の背中で軽くたたき柔らかくする。食べやすい長さにざっくざっく切って熱湯の鍋にばさばさっと落とす。2分ほどで煮上がる。

  庭のみずは青みずである。したがって茎全体は重たい青色している。それがゆでることによって塩のせいもあろうかやわらかい透明がかった青に変身して食欲をそそる色具合となる。

  頭の中では味付けを始めている。からしじょうゆにしようか。それとも酢みそにしようか、と。(ようし、わさびじょうゆにしよう)と決めて調理開始となる。

  ひとはしを口の中に放り込む。さくっさくっとみずならではの歯応えがたまらない。一気に辛さが口中に広がる。

  もちろん、左手には日本酒のコップがきっちり握られている。くーっとやりながらのひとつまみ、くくーっとやりながらのふたつまみは例えようのないゆったりしたときの流れの中に自分の置く。かむほどにわさびの辛さが鼻穴を抜けて涙ぐむ。耐え切れなくてみずそっちのけでコップを忙しく口に運ぶ。

  みずは、茎が柔らかく水分が多いことから方言でみずと名付けられたと聞くが、ウワバミソウが正式名で、大蛇=(ウワバミ)の住みそうな所に生えているから、かくのごとく名付けられているという。

  そんな不気味さとは関係のないうま味を体験しながら、夕方の5時半を独り占めしている。この時間帯が、自分に対するきょう一日のご褒美と位置付けている。

  みずには、カリウム、カルシウムのミネラル成分もあって、となると次回のこの種の料理はそう遠くはない。

  よーし、次回はみずに、ニシン、こんにゃく、ゴボウ、ニンジンを混ぜた煮物と決めた。またの機会が待ち遠しい。
(盛岡市仙北)

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