2009年 6月 20日 (土)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉29 望月善次 大空はよくもはれたり

 大空はよくもはれたり、今更に、なん
  にも悪いことをせぬごとく、
 
  〔現代語訳〕大空は、本当になかなかないくらいに晴れ渡りました。まるで、少しも、悪いことをしないように。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の二首目。「大空」の晴れ渡った様子を「なんにも悪いことをせぬごとく」という比喩(ゆ)(「ごとく」という比喩指標がある「指標比喩」)で喩(たと)えてみせたところが注目点の第一。「よくも」「今更に」という少し砕けた用語がこの比喩を支えている。嘉内自身がこの表現効果をどの程度計算していたかは不明だが、同人達の話題にはなっただろう。「よくも」は、「も」による「よく」の強調的表現。『広辞苑』は、「しにくいことをあえてしたり、あることがかえって幸いだったりした時」の説明をしている。「今更に」も否定や反語などに応ずる強調表現。〔現代語訳〕においては「よくも」「今更に」とも、強調表現であることを前面に出すような訳をしておいた。「大空」は「一天」「天空」「満天」「空一面」などの類語もある『万葉集』や『竹取物語』以来の語。
  (盛岡大学長)

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