2009年 6月 28日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉222 八重嶋勲 授業料滞納などあるはずがない

 ■292巻紙 明治41年12月9日付

宛 東京市麹町区飯田町四丁目三十一、
                日松館
発 岩手縣紫波郡彦部村
前畧昨日手紙ヲ以テ申述候通、法科大學よリ授業料未納学校ヘ出入停止、去ル五日ヨリ七日間内ニ納付セサルトキハ退校處分スルトノ通知ニ接ス(シ)候、如斯コトアルヘキ理由無之、既ニ先月五円不足ノミ差立テアル筈ナリ、昨日又要求通リ二十円他借シテ差立候ニ付否ヤ可払候、此点ヨリ見ルトキハ或ハ毎日学校ヘ出席シ居ル様ニモ無之、何ニ遊シテ居ル次第ナルヤ、家政ヲカタムケ等閑セラルゝ様ニテハ到底見込ミナキモノナリ、此状着次第其意志シアル処報導セラレ度候、岩亀ノ返書ノ如キ何日ニナルヤ三十分間位直キニ草稿ノ出来ルモノナラン、如斯総テ緩慢ニテハ万事成効(功)スル不能コトゝ明察致シ候、小児ヨリ尚ホ甚タ敷アラスヤ、九月上京以來未タ一回モ学校事情等モ又了テノ詳細ヲ報導セシコトナキニアラスヤ、去リトテ無欠席ニ出校シアルニモアラサル様ナリ、別ニ養生品ノ必要モナキモノトセハ盛岡邊ノ上等生活ノ学生シ(ス)ラ一ヶ月三十円ト云フ大学生ノ相場之様ナリ、貧乏生活ハ二十弐三円ニテ間ニ合(セ)居ル様子ナリ、如何理由ナルヤ、右至急報導相成度候也
  十二月九日      野村長四郎
    長一殿
 
  【解説】「前略、昨日手紙をもって申し述べた通り、法科大学から授業料未納であり学校ヘ出入停止、さる5日から7日間内に納付しないときは退校処分にするという通知を受けた。

  このようなことがあるべき理由がない。既に先月5円不足のみ差し立ててあるはずである。昨日また要求通り20円を他から借りて差し立てたのに払っていないのであるか。この点から見ても、毎日学校へ出席しているようでもない。何をして遊んでいるのか。家政を傾けていることを、長一はいい加減な気持ちでいるようでは到底見込みがない。この手紙が着き次第、その意志のあるところを知らせよ。

  岩亀前郡長への返書のようなものも何日になるや。30分間位で直ぐ草稿ができるであろう。このようにすべて緩慢であっては万事成功できないのは明察される。小児よりなお甚だしいのではないか。

  9月に上京以来、いまだ1回も学校の事情等も、すべて詳細を知らせてきたことがない。さりとて無欠席に出校しているようでもない。別に養生品の必要もないとすれば、盛岡辺の上等生活の学生ですら1か月30円というのが大学生の相場のようであり、貧乏生活者は、22、3円で間に合わせている様子である。長一の場合、いかなる理由であるか。右至急知らせてほしい。」という内容。

  授業料滞納で出校停止、そして退校処分にするとの厳しい大学側である。これまでの心血を注いできた努力が水の泡になる。父の驚きはいかばかりかである。

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