2009年 8月 11日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉49 望月善次 うっかりと嘘言を

 うっかりと嘘言(ウソ)をいひたり
  七月の青空の眼の見てゐぬ暇に
 
  〔現代語訳〕うっかりと嘘を言ってしましました。七月の青空の眼が見ていない間に。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の二十二首目。人間には、自身が、それほど深くは意識していたわけでもないのに、思わずしてしまう行動がある。抽出歌では、それを「嘘(うそ)を言う行動」に具体化している。しかし、それだけでは、面白みが不足する。ここでは、そこを「七月の青空の眼の見てゐぬ暇」と対比させてみせたのである。既に、あるレベルのテクニックに目覚めていた嘉内ゆえに採った方法でもある。初句の「うっかりと」や、結合比喩(ゆ)「青空VS眼」「青空VS見てゐぬ」によって、作調は、「軽め」のものとなるのだが、それも作者の計算の中にあったのだと見た。嘉内は、石川啄木への思い入れでも有名だが、「嘘」と言えば、啄木にも「もう嘘をいはじと思ひき-それは今朝-今また一つ嘘をいへるかな。」〔『悲しき玩具』〕等、「嘘」をテーマにした少なくない作品がある。
(盛岡大学学長)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします