2009年 8月 16日 (日)

       

■ 〈胡堂の父からの手紙〉227 八重嶋勲 このうちから授業料を必ず納付せよ

 ■300巻紙 明治42年2月26日付
宛 東京市麹町区飯田町四丁目三十一、
               日松館内
発 岩手縣紫波郡彦部村

前畧豫而請求金之内ヘ金弐拾円本日送金致候、此内よリ必ラス授業料ハ納付候様被致度候、
外当月分ノ如キ暫時送金スルコトハ容易ナラスト被考候、二月中旬又ハ後ニアラサレバ到底金束(策)ニ至リ兼ヘク、
目下平六よリ四百円ノ借財日々督促加ヘラレ、加之目下諸上納ノ滞リ百円計リ有之、是トテモ来ル三月村長満期ナル故今ノ処ニテ完了スルニアラサレバ種々不利益ノミ生スル次第実ニ窮シ居リ候、
先達衣類弐枚書留小包ニテ送付セシ筈、在合之間ニ合セニテ調度致サセ出来揚リノ日、品注文到着致候得共、其尽(侭)送付致候筈、外袷セ様ノモノ是非必要ナルカ、夏期迄間合スルコト得ルヤ、序ニ一報可致候、乍毎度出来得ル限リ節険(倹)被致度、略等聞及処ニ依レバ月弐十弐、三円ニテ間ニ合スル大學生モ有之由、又世間ニハ贅澤ヲ極メ月五十円送金スル大家(ノ)息子モ有之様ナリ、昔ヨリ贅澤生ニ成効(功)セシ人曽テ無之由、苦學生ニ成効(功)セシ人ノアルコトハ人モ我モ経暦(歴)上明ナリ、殆(況)ンヤ手前ノ如キ無資産モ同様ノ農家ヨリ大學生出シモ山師ノ極ナリ、克ク々被考、苦学的節険(倹)被致度、右用事迄、早々
    二月廿六日      野 村
     長一殿
 
     
  紫波町日詰郡山駅平六酒造店  
 
紫波町日詰郡山駅平六酒造店
 
  【解説】「前略、かねて請求金の内へ20円を本日送金した。この内から必ず授業料は納付するようにせよ。

  今月のような臨時の送金は容易でないことを考えよ。2月中旬またはその後でなければ到底金策しかねる。

  目下平六酒造店からの400円の借財を日々督促され、加えて目下諸上納の滞り100円ばかりあり、これとても来る3月村長が満期となるので、今のところで完了できなければ、種々不利益のみ生ずる次第であり、実に窮している。

  先立って衣類2枚、書留小包で送付したはず、有り合わせの間に合わせで調度させ、その出来上がりの日に、長一から品の注文がきたけれども、そのまま送付した。外に袷のようなものもぜひ必要であるか。夏期まで間に合わせることが出来るか。ついでに一報せよ。毎度ながら出来るかぎり倹約せよ。大体聞いたところによれば、月22、3円で間に合わせる大学生もあるとのこと。また世間には贅沢を極め月50円送金する大家の息子もあるようである。昔からぜいたく生に成功した人はかつてないとのこと。苦学生に成功した人のあることは人もわれも経験歴上明らかである。

  いわんや手前のような無資産も同様の農家から大学生を出すのは山師の極みである。よくよく考えよ。苦学的節倹をせよ。右用事まで、早々」という内容。

  1月21日付手紙に「旧冬ノ借金払方ニ就テハ大ニ困難セシ、約四百円バカリ金策有リタルモ、秋以来ノ送金百八十円計ノ外中野百円ノ内六十円ヲ払込、井豊百五十円ノ内五十円払込、其他上納金六十五円払込シ、外三十円以内ノ借金、品代ヲ返済シ、平六ノ如キ大借金ハ元利共ニ払込ミ致シ兼、」とあり、年末の借金支払いのために、平六酒造店から400円借財したもののようであり、それが日々督促されているというのである。

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