2009年 8月 18日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉52 望月善次 七月の雲はもくもく

 七月の雲はもくもく渦まけり、沸騰皿
  の沈殿の雲、
 
  〔現代語訳〕七月の雲は、もくもくと渦まいています。まるで、沸騰(蒸発)皿の沈殿物のような形をした雲ですね。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の二十五首目。「七月の雲」は、夏の雲。「煙や雲」に用いるオノマトペ「もくもく」は、飛び抜けたオノマトペとはいかないが、整合性はある。(もっとも、後年の賢治となれば「もくもくした新らしい鋸屑」〔「イギリス海岸」〕と来るから一応は、平凡さからは脱出する。)この「もくもく渦まけり」の「雲」を「沸騰皿の沈殿の雲」とするところは、さすがに「理系」の盛岡高等農林生。なお、「沸騰皿」は、「蒸発皿」のことだとしたが、化学・化学実験には、からきし駄目の評者である。思い違いがあったら御教示願いたい。一応「沸騰皿=蒸発皿」とし、「蒸発皿」とは、「試験体が水などに溶解している場合に、水分を蒸発させて固体の試験体を得るための浅い皿。」〔『広辞苑』〕だとした。それにより、結句「沈殿の雲」が説明がつくように思われたのである。
  (盛岡大学学長)

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