2009年 8月 20日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉271 岩橋淳 やあ!出会えたね カブトムシ

     
   
     
  虫の王様、カブトムシ。ひところ、外来種の、より大きくハデな種類がもてはやされていましたが、やっぱり日本の兜(かぶと)の「前立(まえだて)」に擬せられたシンプル(「愛」なんてのじゃなく)、剛直をもって身上とするところ、皆様にも異議ないところでしょう。

  写真家にしてナチュラリスト、本稿でもご紹介(222「夏の日」)いたしました今森さんは、昆虫をテーマとした写真集も多数著しています。本作はカブトムシの生態をとらえ、小学生向けの解説を付したもの。

  雑木林の樹液に集まる森の虫たちの間での秩序についての描写などは臨場感満点。ファインダーを通して被写体を追う、撮影者の意志が文字に写し取られたかのようです。

  また、卵から幼虫、さなぎ、羽化の過程は、オールロケで追ったとのこと(幼虫のアップは圧巻)。ありのままの生態を写し取ることにこだわった、自然に対する真摯(しんし)な姿勢が伝わってきます。さらに感じ入るのは、カブトムシと人間との関係。かつては林の木々を人間が活用することで、カブトムシの生育環境が整えられていたというのです。

  昆虫への興味が、地域や人間の生活に結びつく。図鑑とは役目を異にする、生きたテキストと言ってもいいでしょう。見つけ方、飼い方のガイドつき。

 【今週の絵本】『やあ! 出会えたね カブトムシ』今森光彦/文・写真、アリス館/刊、1470円(税込み)(2009年)


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