2009年 8月 25日 (火)

       

■ 〈イタリアンチロルの昼下がり〉77 及川彩子 干潟のクルーズ

     
   
     
  イタリアに住んで十数年、いつか行って見たいと思い続けていたベネチアの干潟クルーズ。友人に誘われ、この初夏、やっと機会に恵まれました。

  干潟に浮かぶ大小百以上の島に築かれた水の都ベネチア。その中の古都の散策ではなく、ラグーナと呼ばれる干潟の自然を小さな船で巡るのです。

  出発地点は、潟に注ぐ運河の小さな船着場。

  クルーズの料金は1日1人25ユーロ(3千円程)。お弁当を抱え、あちこちから乗り込む乗客100人ほどで船は満席。私たち家族もデッキに陣取りました。

  汽笛の合図で、船は葦(あし)の生い茂る運河を滑るように進みます。茂みから聞こえる鳥の声、水面を撫(な)でる柳、戯れる水鳥、海ヘビ…珍しい自然の風景に娘たちも大喜びで双眼鏡を奪い合います。イタリア人の乗客は、デッキでのんびり日光浴。

  1時間程で段階式の水門を通過。アドリア海方向に向かうと、潮のにおい、頭上にカモメ、そして一面ラグーナの絨毯(じゅうたん)が広がりました。ここはサギやカモメの楽園で、船はまさに侵入者です。

  その昔、製塩と漁業で暮らしていた周辺のベネチア人は、無限に採れる塩で富を手にします。そして潮の干満を利用し、小回りの利く小型の平底船で、侵略者を防ぎ、都市国家を築いたのです。その小型船がゴンドラの発祥とも言われます。

  今は年中、観光客であふれるベネチア本島。夏になると、本島の人たちは、自家用ボートで町の喧(けん)騒を抜け出し、ラグーナで日長過ごすのだそうです。

  小さなボートで釣りを楽しむ人たち〔写真〕を眺めていると、ラグーナは、今もベネチアの人々の安らぎを守る自然の要塞(ようさい)であることを感じさせられます。

  はるか彼方のサンマルコの鐘楼が、おもちゃのように見えました。

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