2009年 8月 27日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉55 望月善次 歩め、歩め、しづかに

 歩め、歩め、しづかに歩め、夜の土は
  まったくしめる、いっせいにしめる
 
  〔現代語訳〕歩け、歩け。静かに歩け。夜の土は、本当に湿っている。一斉に湿っている。

  〔評釈〕「大空がまったく晴れておそろしや」三十二首〔『アザリア』第二輯(盛岡高等農林学校アザリア会、大正六年七月十八日)〕の二十八首目。いわゆる「馬鹿旅行」を題材にしたもので、嘉内は、歌稿ノート『我は独り』に、この「馬鹿旅行」について六十首ほどの作品を残している。同じ『アザリア』第二輯には、賢治の「夜のそらにふとあらはれて」のみでなく、小菅健吉(二三四)は「不良少年」(短歌)を、河本義行(緑石山人)は「車のきしり」(自由律俳句)を残している。「不良少年と云ひ合ひ夜すがら歩みけるつかれて休む不良少年。」(二三四)、「螢ひそまるその水その草も夜」(緑石山人)は、その具体例。また、賢治の初期短編「秋田街道」では、「どれもみんな肥料や薪炭をやりとりするさびしい家だ。街道のところどころにちらばって黒い小さいさびしい家だ。それももうみな戸を閉めた。」と始まる。「夜の土は〜しめる」が嘉内の感覚。だから「しづかに歩め」となる。
(盛岡大学学長)

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