2009年 10月 1日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉277 岩橋淳 たぬきのおつきみ

     
   
     
  お月見。観月(かんげつ)。四季の風物をめでる術を数多く持つ日本人、「月」には、いくつもの呼び名や風習があって、先人の感性にはただただ頭が下がります。

  さて、ニッポンの心は山野に起居するタヌキたちにもちゃんと備わっていて、田畑の豊年満作を祝いつつ、お月さまへの感謝を表そうというのが、今週の1冊。

  憤怒の形相で見下ろす案山子の視線をものともせず、黄金の穂を垂れたたんぼから、「おすそわけ」を少々。畑からはサツマイモを失敬。街道のお地蔵様からもお供物のおだんごを「ほんおすこしだけ」いただいて、原のススキを担いだら、いそいそと山へ集まります。

  どこで調達したのか演歌歌手ばりの盛装、白面にくまどりの強烈な化粧。これを里の人間なら、どう見ても悪ふざけかバカされたかと思うところでしょうが、タヌキたちはいたってまじめ。いや、実際、照れなのかどうなのか、やっぱり悪ふざけのような振る舞いなのですが、かれらの目当てはただひとつ。

  「よろこんで くださるかのう」「わろうて くださるかのう」と、すべてはお月さまへの心づくし。さてタヌキの心、天に届くや否や。……自然の循環の一員としての意識は、もしかしたら人間より彼らの方が、一枚上手かも?

  今年の十五夜は、10月3日です。

  【今週の絵本】『たぬきのおつきみ』内田麟太郎/作、山本孝/絵、岩崎書店/刊、1260円(税込み)(2003年)

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