2009年 10月 10日 (土)

       

■ 〈阿部陽子の里山スケッチ〉115 十二神山(じゅうにしんざん、731メートル)

     
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  十二神山を山田町側から登るとすれば、航空自衛隊の山田分屯地に文書で許可をもらい、薬師神社を祀(まつ)った頂上まで案内してもらう必要がある。私も過去に一度、自衛官のご案内で一等三角点にタッチしたことがあった。キラキラ光る紺碧の海がまばゆい…せいぜいそんな印象だったと思う。そのときの私は、これっぽっちも樹木に気持ちがとどかなかった。

  後で知ることになるのだが、宮古の東側には「十二神山自然観察教育林」と名づけられた広大な天然広葉樹林が横たわっていた。屏風のように立ち上がる険しい山襞(ひだ)。重茂川に何本もの小沢が注ぐ。トチ、クリ、ミズメ、カツラ、ケヤキ、ナラ、ブナ、サワグルミ…など、巨木が織りなす「千古の森」だ。

  芽吹きはミドリのドームを仕立て、秋から冬枯れの静寂へとモードをうつす。東面にこれほどの森が潜んでいたとは、正直言って驚きだった。千古の森を訪ね、私は十二神山の核心部に触れ、深く魅了された。

  案内してくれた友は、奥深く山を知って欲しいと言う。「ほらっ、ミズメの皮からサロメチールの香りがにおうでしょ」「トチの実があちこちに落ちている…ニホンジカが入っていない証拠です」。葉に木の名前を知るヒントがあり、そこから動物や昆虫が見えてくる、とも教わった。

  十二神山は、山体そのものが薬師如来の大願を守護する十二神将だ。連続するデコボコの嶺を、神の籠もれる霊峰と崇めたとある。「弥勒・得大勢・阿弥陀・摩利支天・観音・虚空蔵・地蔵・文殊・薬師・普賢・金剛手・釈迦」の十二神だが、方角や時刻をつかさどる十二支にも関係ありで、こちらは子供のころからなじみ深い。
 
  自然観察教育林は、目印の赤布を頼りに第1園地から第2園地へマップの巨木をたどって周回するのが一般的であろう。木に×印を付けた所では第2園地へ下ること。×印方面へ行っても路は消える。沢沿いの林道を1`b歩き、出発した第1園地に戻る。

  また、ここでは自衛隊敷地内の山頂とは別に、631・9bのミニピークを独自の山頂と著している。第2園地で沢を越え、300b上部を左方向へトラバース。沢の左岸を270b登った地点で左の斜面に取り付き尾根を直登するが、路は不完全だ。距離にして全長1180b、安易に登ってしまうと鬱蒼(うっそう)たる千古の森で下山路を見失う。631・9bの尾根には標柱が立っている。

  なお、703bに祀られた神社はバラ線が囲む敷地内にあり、参拝できなかった。

(版画家、盛岡市在住)

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