2009年 10月 15日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉279 岩橋淳 マグロを育てる

     
   
     
  例えばマグロのない鮨(すし)屋など想像もつきませんが、近い将来そんな日が…、という話が深刻に語られています。環境の変化? ことマグロに関しては、乱獲も大きな原因。昨今のスシ・ブーム、ヘルシー志向でマグロの消費が世界的に増え続けているのです。

  またの名を「黒いダイヤ」とまでいわれる希少種・クロマグロ(ホンマグロ)については、実はかなり前から、減りつつある数が問題視されていたとのこと。今週の一冊は、クロマグロの完全養殖に半生を捧げた科学者の奮闘物語です。

  何ごとにも、開拓者には多大な時間と失敗が要求されるものですが、そもそも謎の多い海の生物、それも大型の回遊魚であるマグロの飼育については、すべてが初めて尽くし。1970年の研究開始から、幼魚を飼うことすらままならず(手で触っただけで死んでしまう)、失敗を重ねつつ、初めての産卵まで9年を要するのです。これが道半ばならぬ、一里塚。

  孵化させ、稚魚を育てるのに、待っていたのはそれ以上の試行錯誤。しかしスタッフの粘り強さ、「飼うことは学ぶこと」という姿勢で、マグロの生態や習性が少しずつ、解明されていきます。…レポート形式の記述ですが、読みながらの嘆息は、数知れません。

  そして、生命の不思議と人智のすばらしさへの、あらたな感銘。ただただ消費するだけの立場としては、せめてこそ「いただく」という気持ちを忘れないようにしたいものです。

  【今週の絵本】『マグロをそだてる』熊井英水/監修、江川多喜雄/文、高橋和枝/絵、アリス館/刊、1470円(税込み)(2009年)。

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