2009年 10月 20日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉75 望月善次 片岩の塩酸泡沸

 片岩の塩酸泡沸、空ありて がらり
  と晴れし 秩父紺青
 
  〔現代語訳〕(今見る目前の)結晶片岩の塩酸の泡は沸いています。(この素晴らしい結晶片岩の上には)空があって、がらりと晴れていて、「秩父紺青」と呼べるような空です。

  〔評釈〕「山に向へば」十首の六首目〔『アザリア』第三輯(盛岡高農アザリア会、大正六年十月十七日)〕。「片岩」は、「結晶片岩」のことで、「変成岩の一。結晶質で。鱗片状鉱物や長柱状鉱物が平行に発達するために特有な剥離性を示す」〔『広辞苑』〕が、その様は「ハンカチを操んだ様に烈しく押し曲げられた」〔「(萩原昌好)埼玉秩父と賢治(宮沢賢治記念館、一九九四)」〕であるという。ちなみに賢治は、この「片岩」に関連して「つくづくと「粋なもやうの博多帯」荒川ぎしの片岩のいろ。」〔大正五年九月五日嘉内宛書簡〕と歌っている。「塩酸泡沸」については、地質についての常識のない評者にとっては、正直に言って、具体相が分かりかねたが、苦し紛れの〔現代語訳〕を付けておいた。「がらり」のオノマトペの使い方、「秩父紺青」へのまとめに至る強引さが嘉内的でもある。
  (盛岡大学学長)

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