2009年 10月 22日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉280 岩橋淳 おふろやさん

     
   
     
  今を去ることン十年前、友達と待ち合わせて銭湯に通っていた時期がありました。日暮れまで遊び倒しただけでは足りず、夕飯を挟んでの放課後ダブルヘッダー第2試合気分で再び集合。中人(チュウニン)1人20円、なかなかに有意義なひとときでした。

  今週の1冊は、昭和50年代はじめ(中人は「60円」の表記アリ)、ある銭湯でのヒトコマをスケッチしたもの。モブ(群衆)シーンを描いては第一人者の作者は、1組の家族を中心に、あえてセリフや地の文を排し、ひたすら人々を俯瞰(ふかん)します。

  ゲタ箱に始まって番台や床板にいたるまで、使い込まれて黒光りする脱衣場の造作。籐編みの丸籠。足の裏に独特の粗っぽさを感じつつマットを踏んでガラス戸を開ければ、正面には地元商店のホーロー看板に縁取られたペンキ絵の富士山。高い天井にこだまする桶の音まで聞こえてくるようです。

  そして、老いも若きもみなハダカ、そのほとんどが向こう三軒両隣、ご町内のおなじみさんの風情。ご隠居さんからお目玉喰らうワルガキどもも、もんもん背負ったおアニィさんも、コミュニティーの一員です。

  最近では、おんなじ湯に浸かっても、ご近所なのに初顔合わせのごとく、ヨソヨソしさばかりが先に立つような雰囲気になりがちですが、どうせハダカになるのなら、見栄や警戒心は脱衣籠に置いて、心もゆったり、芯まで温まりたいところですよね。

 【今週の絵本】『おふろやさん』西村繁男/作、福音館書店/刊、840円(税込み)(1977年)



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