2009年 10月 29日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉79 望月善次 関東の真珠輝く空なれば

 関東の真珠輝く空なれば甘藷の葉と葉
  うら返るなり
 
  〔現代語訳〕ここ関東の真珠が輝くように(晴れ渡った)空ですので、甘藷(サツマイモ)の葉と葉が裏返るのです。

  〔評釈〕「山に向へば」十首の最終歌。既に触れたところでもあるが、嘉内は、一九一七(大正六)年の七月二十三日から秩父・甲斐・諏訪方面に地質旅行をし、故郷の山梨に帰省する。その様子は、歌稿ノート『秩父始原層』のおびただしい作品にまとめられ、そこから拾うようにして『アザリア』に投稿される。一連の『アザリア』作品と歌稿ノート『秩父始原層』とを読み比べてみると、抽出歌など、やはり提出が唐突の感を免れない。「関東の真珠輝く空」には、純粋に客観的描写のみでなく、今東北の地、盛岡に住む嘉内の「関東」への思いも込められているように感じられた。甘藷は、「サツマイモ(薩摩芋)」の「薩摩」の名が示すように基本的には暖かい地方のもの。また、同じ植物を取り上げるにしても、園芸植物ではなく、甘藷(サツマイモ)を取り上げるところは、農業への志をもった嘉内らしいところ。なお、「空なれば」VS「葉と葉うら返るなり」の論理は、自然科学的ではなく詩歌的なそれによったもの。
(盛岡大学学長)


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