2009年 12月 8日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉93 望月善次 試験管 子細らしくは

 試験管 仔細らしくは振り居れど 不
  生産なるしけんかんわり
 
  〔現代語訳〕試験管を、それらしく振っておりましたけれど、試験管を割ってしまうなんて、本当に「不生産」の極みですよね。

  〔評釈〕「寂れたる空」十首〔『アザリア』三号〕の五首目の作品で、小題「(試験管わりのうた)」の二首目。「仔細(子細)」は「仔」、「細」のいずれも「こまかい」ことを示す漢字で同種の意味を重ねることによって成る熟語。抽出歌に即した意味は「事情」となるが、これは日本で生じた意味。(〔現代語訳〕では、「仔細らしく」は「それらしく」と少し砕けた表現とした。)「仔細らしくは振り居れど」からすると、実際の生身の嘉内がどうであったかは別として、話者は「実験」にある違和感を抱いていることになる。「不生産なるしけんかんわり」については、一方では確かに技巧的な表現でもあるのだが、率直に言って意味の取りにくいところが残った。自信のないところがあるのが正直なところだが、「分からない場合でも、できるだけ意味を通らせるようにする」という基本方針のもとに、〈本当に「不生産」の極みですよね。〉というご覧いただくような〔現代語訳〕を掲げることとした。
(盛岡大学学長)

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