2009年 12月 10日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉94 望月善次 加里沈殿、塩化白金大明神

  加里沈殿、塩化白金大明神、ガラスの
  壺におさまりかへる
 
  〔現代語訳〕加里の沈殿物、塩化白金が大明神のように、ガラスの壺にすっかり収まっています。

  〔評釈〕「寂れたる空」十首〔『アザリア』三号〕の六首目の作品で、小題「(試験管わりのうた)」の三首目。賢治関係の写真としても名高い「化学実験室」〔『新校本宮澤賢治全集』でいうと「写真三四」〕の風景かとも思われる。「加里沈殿、塩化白金」の化学用語に関しては、例によって自然科学音痴の評者としては「パス」のカードを切らざるを得ない。「大明神」の「明神」は、もと神社の中で古く、霊験あらたかな神を表した「名神」(延喜式では二百八十五神)〔『マイ・ペディア』〕で、次第に「明神」となったもの。「大明神」はそれをさらに強めたもので人名・事物名などの下につけて尊んでいう〔『広辞苑』〕。「加里沈殿、塩化白金」の化学的物質につけることで、滑稽(こっけい)味を出す効果がある。「おさまりかへる」の「かへる」は動詞連用形について動作等の程度の高さを示し、やはり滑稽味を出す効果。
(盛岡大学学長)

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