2009年 12月 13日 (日)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉96 望月善次 たんたらと筧を落ちる

 たんたららと 筧を落ちる雨のごとし
  こゝの濾液はねむさうにして
 
  〔現代語訳〕ここの(実験の)濾(ろ)液は眠そうで、たんたららと筧(かけひ)を落ちる雨水のようです。

  〔評釈〕「寂れたる空」十首〔『アザリア』三号〕の七首目の作品で、小題「(試験管わりのうた)」の四首目。抽出歌の範囲では、具体的に何の実験かは特定できないが、(ある実験の)濾(こ)された液は「たんたららと」筧を落ちる雨水のようで、眠そうだというもの。「筧」は「懸樋」の表記もあるように、水を通すための樋。「濾液はねむさうにして」と「濾液」を擬人化しているが、こうした擬人化は嘉内が好んで用いたところ。好んでと言えば、嘉内の「啄木好み」については既に何度か触れて来たところであるが、抽出作品についても、啄木の「たんたらたらたんたらたらと/雨滴(あまだれ)が/痛む頭にひびくかなしさ」〔『一握の砂』118〕の影響を受けたものではないだろうか。嘉内作品の「たんたららと」と啄木作品の「たんたらたらたんたらたらと」はあまりにも似ているし、嘉内作品の「筧を落ちる雨のごとし」の「雨」も啄木作品の「雨滴」を彷彿させるからである。
  (盛岡大学学長)


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