2009年 12月 13日 (日)

       

■ 〈早池峰の12カ月〉23 丸山暁 やはり野におけスミレ草

     
   
     
  今年の畑仕事をすべて終え耕した一面土色の畑を眺めていたら、畑の隅っこで1株のビオラが、冷たい風に花びらをふるわせていた。けなげでたくましくもあるが、何を好き好んで、ビオラはこんなところでこんな時期に花を咲かせているのだろうか。

  実は、わが家ではビオラをわざわざ植えたことはない。それがいつのまにか毎年、わが家のあちこちからビオラが芽を出し花開くようになった。

  近年野菜や花は、人間が望むように品種改良を重ね、さまざまな色や形のものを生んでいる。園芸雑誌を見ればパンジー(スミレ)も毎年幾つもの新種が販売されている。

  そういう種や苗の多くは1世代だけで、種をつけなかったり、2、3世代でひ弱になって消えていく。しかし、その中の幾つかはわが家の楽園に居着いて、何世代か風雪に耐え、たくましくなるものもある。

  このパンジーも何世代かで元の原種のたくましいビオラ(スミレ)に戻ったのではないか。正確なところはその道のプロに聞かねば真実は分からないが。

  人間、特に日本人はここのところ2、3世代で経済的に急激に豊かになり栄養状態もよく、姿形も良くなり、都会では着せ替え人形のように流行に彩られた乙女や青年、少年少女が増えてきた。秋葉系、萌(もえ)系など漫画の世界の族(やから)まで出てきた。

  日本社会は、今はまだ世界有数の高度文明に囲まれて華やかに着飾っていられるが、あと数年でIT産業の中心はインド、バングラデシュ、工業は中国、ブラジル、東南アジアに移り、秋葉原とて上海あたりにぱくられ、日本の享楽的繁栄は終わりを迎えるだろう。

  その時彼らはきっと東京・都会近郊の故郷に戻り、しばらくはふてくされていても、その内食うに困れば畑仕事に精を出し、たくましくなってくるのではないか。先日TVを見ていたら、以前も書いた渋谷系ギャル社長は本物の日に焼けて、農作業姿もたくましくなっていた。

  ステーキ、すしだとぜいたくを言い、好き嫌いの多いお坊ちゃまお嬢様とて、腹が減れば何でも食べるはず。特に岩手など山国では、食料、小遣い稼ぎに楽しそうに野山を駆け巡る、そんなたくましい童子(わらし)も戻ってくるのではないか。

  日本は今、不景気のどん底にあり、ある程度安定した暮らしができる景気回復は必要であるとしても、そんなビジョン(幻想的未来)があってもいい。スミレはもうすぐ雪に埋もれ、北国の冬は時には心も体も折れそうな時がある。「スミレ君、お互いなんとか冬を生き抜いて、来春花を咲かせよう、春は必ずやってくる」、やはり野におけスミレ草。
  (丸山暁建築・空間工房、大迫・外川目在住)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします