2009年 12月 20日 (日)

       

■ 〈早池峰の12カ月〉24 丸山暁 もう一つの宇宙「大地」

     
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  小雪降るクリ林のあちこちに、数10a間隔だったり連続したり、ボコボコと土まんじゅうができていた。そこからモグラがヒョコヒョコ姿を見せれば、まさに天然本物のもぐらたたきだが、残念ながらモグラの頭は見たことがない。彼らが頭を出すとしても真夜中だろう。

  モグラの痕跡がたくさんあるということは、わが家にはモグラの大好物であるミミズがたくさん住んでいて豊かな土壌の証しでもある。

  地球上の土壌は、元々は地球を形作る硬い鉱物が風化し細かくなった土を、ミミズが食べ分解し、有機物と無機物が混ざり合い、リンや窒素、カリなどを含む腐植土として排出したもの、すなわち、地球上の豊かな土壌のほとんどはミミズのウンコなのである。

  ちょっとミミズの話をすれば、ミミズは世界に1,800種、長さ2.5aのものから3b(直径7.5a)のものまでいる。

  進化論のダーウィンの研究の多くはミミズに費やされ、ダーウィンは30年間でミミズが土を18a盛り上げる、すなわち耕すことを発見した。

  そんなミミズが大好物なモグラだが、モグラはミミズを捕まえ、端っこをかじり、そのまま飼育したり、乾燥ミミズをトンネル内に数千匹貯蔵していることもあるそうだ。

  僕がゼネコンで巨大都市開発にかかわっていた28歳のとき、P・ファーブの『土は生きている』(蒼樹書房)に出合い、モグラやミミズの話、「土なしに命はないし、命のない土もない」「生き物たちの共生(シンピオシス)」ということを知った。この本は、僕に大地は命の宝庫、大地には生き物たちの雄大な地下都市があることを教えてくれた。

  実は、この本を中学生だった僕の絵の師匠のお嬢さんに貸したのだが、彼女は農学部に進み、今東北の農業試験場で土と共に生きている。師匠は娘さんに鎌倉でお嬢さん暮らしをさせたかったのかもしれないが、1冊の本が人生を変えることがある。

  人間は金星だブラックホールだと宇宙へと思いをはせるが、命の母である大地にはあまり関心を示さない。それどころかコンクリートで覆い尽くし、食料増産のため除菌殺菌して生物を根絶やしにして、あげくはごみを埋め、核廃棄物の捨て場としようとしている。

  もし愚かな人間が、核戦争で土壌を放射能で汚染し滅び去っても、また何万年かかけてミミズが土壌を回復してくれるのではないか。地球のすべての生き物にとっては、人間よりミミズの方が偉大なのである。人間は、そのこと、今この時、北国の凍てついた地面の下にも、命豊かなもう一つの宇宙があることを忘れないでいてほしい。

  (丸山暁建築・空間工房、大迫・外川目在住)

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