2009年 12月 22日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉99 望月善次 猿之助、三保の谷三郎

 猿之助、三保の谷四郎国俊の小具足美
  々し、引き組みてよし。
 
  〔現代語訳〕(悪七兵衛景清は、六代御前を救うため三保の谷四郎国俊と雄々しく闘うのですが)その三保の谷四郎国俊を演ずる市川猿之助の鎧の小さな部分が本当に美しいのです。それが組み込まれているのがいいなあと思うのです。

  〔評釈〕「紅隈の大荒事、」五首〔『アザリア』四号(大正六年十二月)〕の冒頭歌。題名の「紅隈の大荒事」は、同じ号に、隣合わせで発表されている「明烏春泡雪」十三首の中の最終歌が「市川の大荒事の紅隈に富香のかんざし、銀にゆれつゝ」があることを考えると、むしろ「明烏春泡雪」をも含む計十八首全体の題名であるとも考えられるもの。十七首共、歌舞伎にちなむもので、その方面に素人同然の評者など解説めいたことを加えるのが恐ろしいほど。見当外れのことも少なくないだろうから読者各位の御海容を得たい。「荒事」は「隈取をし、扮装、動作、発声にわたって様式的・誇張的な演技を行うこと。初世市川團十郎の創始になり和事に対するもの。」「紅隈」は紅色の隈取りで正義・勇気の象徴。〔『マイ・ペディア』〕「三保谷四郎国俊」は、猿之助が演ずる役柄。一連の作品同様、抽出歌も歌舞伎に関連する事実を強引に一首の中に入れているのだが、その実証の余裕が既にない。
  (盛岡大学学長)

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