2009年 12月 29日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉102 望月善次 福岡貢、白がすりなる

 福岡貢、白がすりなる帷子に十人斬り
  のたける心は、
 
  〔現代語訳〕〔あの「伊勢音頭恋寝刃」(いせおんどこいのねたば)の〕福岡貢は、白絣の帷子(かたびら)で十人斬りをしたのですが、そのたけり狂った心は、どんなものだったのでしょう。

  〔評釈〕「紅隈の大荒事、」五首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の四首目。福岡貢は、「伊勢音頭恋寝刃」の主人公。元になった事件はいわゆる「油屋騒動」である。これもインターネットの知識であるが、事件は、当時の三大遊郭の「古市」で起こったもの。27歳の町医者・孫福斎(まごふく・いつき)が、古市の有名な伎楼「油屋」で起こした事件。なじみの遊女、お紺(16歳)をめぐり、恋の嫉妬に狂い、刀を振り回し、3人を斬り殺し、6人を負傷させたというもの。近松半二の弟子である大坂の近松徳叟の手により、数日にして切狂言「伊勢音頭恋寝刃」になった。福岡貢は孫福斎に相当する人物に与えられた名であった。作品としては、既に繰り返して指摘しているところであるが、一連の作品と同様「強引な」作品化が目立っている。あまりに歌舞伎の世界に打ち込んでいる作者には、「作品の出来」など問題でなかったのかと思われるほど。
    (盛岡大学学長)


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