2010年 1月 7日 (木)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉105 望月善次 うるはしの淑きはしためよ

 うるはしの淑きはしためよ、君が来て
  粉雪降る夜は泣かまほしかり
 
  〔現代語訳〕可愛(かわい)らしい心に汚れのない禿(かぶろ)よ。お前が登場してきて、雪の降っている夜の場面は、もう泣きたくなるほどあわれを誘うのです。

  〔評釈〕「明烏春泡雪」十三首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の二首目。「はしてめ(端女)」は「端(不十分)+女」で、「召使の女」を指す。ここでは「禿(かぶろ・かむろ)」のこと。「頭に毛がないこと」が原義で、幼い子供が髪を短く切ったところも指す。つまり、花魁などに使われる十歳前後の見習いの少女〔『広辞苑』〕)」のこと。「明烏春泡雪」の場合では、二人の禿が登場する。時次郎、浦里の子である「みどり」と、浦里をかばう「ゆかり」である。作品の範囲で見る限りは、その両方の可能性がある。実の子なのに禿として浦里の側にいる「みどり」と、必死に浦里をかばう「ゆかり」、いずれも観客からすれば涙を誘う存在であったろう。ただし、こうした説明を加えなくても、一首の世界が読者の共感を呼ぶかは議論が分かるところ。なお、「君」を禿だとする解釈に合わせて、〔現代語訳〕においては、「うるはし」を「可愛らしい」、「君」を「お前」としておいた。
(盛岡大学学長)

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