2010年 1月 14日 (木)

       

■ 〈お父さん絵本です〉292 岩橋淳 ゆきむすめ

     
   
     
  特異な画風で熱烈なファンの多いコージズキンことスズキコージさんの、これが1974年のデビュー作とのことです。本作は久しく絶版となっていましたが、今週ご紹介するのは版元を移して2005年に復刊されたもの。子どものない老夫婦が授かった美しい娘の、短くはかない運命を描く、ロシア民話の代表作のひとつです。

  雪から生まれた生命、ということでは、本稿でも『ゆきだるま(スノーマン)』などをご紹介してきました。また、子どものない老夫婦が…というパターンは、桃太郎、かぐやひめをはじめとして、童話民話の世界では代表的な設定と言ってもいいでしょう。

  いつかは消えてしまう、それも皆が待ちこがれている春の訪れが別れの時になる切なさ。運命を知りながら、許された時を精一杯生きるけなげさ。あるいは自然の摂理、大気の循環という大枠における衆生について。娘にあえて火を飛び越させることの意味。生と死、老い、セクシュアリティー…、パターン化され、器を変えては繰り返し供せられる物語の、意図するものは。

  これに接する者が、何を受け取るのか。さらには、その世界観を過不足なく描き出し、読者のイメージを助けるという意味において、童話・民話を絵本化することの意義と、難しさ。その奥行きをきちんと持つ作品を見極めることの大切さ。

  たかが絵本? いいえ、読み込むほどに、深みは増していくの、です。

  【今週の絵本】『ゆきむすめ』ロシア民話、岸田衿子/文、スズキコージ/絵、ビリケン出版/刊、1470円。


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