2010年 1月 17日 (日)

       

■ 〈早池峰の12カ月〉28 丸山暁 雪降り積もる谷間で

     
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  1年で一番寒いこの時期、雪降り積もる谷間の風景など見たくもないだろうが、これが北国の山里の典型的な冬景色の一つだろう。僕の仕事場から望む西側の谷間の風景である。

  この谷間にやって来て2、3年は、生活の場を形づくるのに精いっぱいだった。日の出前から、日が沈んでも、畑や家周りの造景、一面の畑をいくつかに区切り、石垣で段々畑・花壇を作り、道をつけ石を敷き詰め、砂利を敷いたり木を植えハーブを植えたり、家の中の造作、断熱材を入れて壁天井を張り、納戸、本棚づくりに明け暮れた。

  そんな日々が過ぎ、4、5年経ち、暮らしが落ち着いてくると、この谷間の暮らしは、特に冬など、閉塞(へいそく)的で締め付けられることもあった。太陽が顔を出すのは、平地より3、40分は遅く、日の入りは、これまた早い。谷間だけでなく心まで暗くなる。

  今から10年くらい前までは、買い物の不便さがやけに気になった。まだ、産直も少なく、今で言う大型ショッピングセンターもなく、ちょっとした仕事や趣味のもの、画材や本やCDなどは、たまの帰京時に買いあさった。物の豊富な東京が恋しくなることもあった。

  ところがここ4、5年でこの辺りの買い物事情は大きく様変わりしてきた。幾つもの大型ショッピングセンターやスーパーが近在にでき(わが家の買い物圏は北上、花巻、紫波、盛岡である)、品数も豊富で値段も安い。

  盛岡にJ堂書店が出店し、Tレコードもやって来た。これで本屋、CDショップもほぼ満足できるようになった。野菜果物はR396フルーツ街道、産直街道が目の前である。鮮度、安さでは日本一恵まれているといっても過言ではない。言い過ぎかな?

  てなことで、数年前まで心のどこかにあった東京への物欲、にぎわいへの欲求は、ここのところ薄れてきて、かえって都会の暮らしは不便にさえ感じる今日このごろである。

  地域の豊かさにとっては自然環境や落ち着きも重要だが、ある程度暮らしの物の質を上げることも大事である。それに加え、現代的にデザインされた空間や歴史的街並み、ちょっとキッチュ(雑多)なにぎわい、芸術文化的世界が地域、街中に点在すれば申し分ない。

  盛岡は文化・芸術活動は活発で、人口に比して絵を描く人々が多いと聞いた。それにしては画廊、絵や造形などを展示できる場が少々少ないように感じている。ちなみに僕も今年は盛岡で個展をやろうかと考えている。雪に埋もれた谷間の冬、身を引き締め心を研ぎ澄ませ創作活動に励むとするか。それとも、もうしばらく冬眠か。

  (丸山暁建築・空間工房、大迫・外川目在住)

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