2010年 1月 28日 (木)

       

■ 〈県内初の裁判員裁判〉裁判員が初めて質問 被害者の長男が証人に

  盛岡地裁(佐々木直人裁判長)で始まった県内初の裁判員裁判は27日、第2回の公判が開かれた。証拠書類の取り調べと証人尋問が行われ、弁護側申請により被害者の長男が証言。これに対して一人の男性が裁判員として初めて質問した。証拠調べでは検察側が被告人の供述調書を読み上げ、犯行に到る心境が明らかにされた。

  審理対象は遠野市の伊藤賢一被告(54)が昨年6月26日、同市内の自宅で当時45歳の妻を刺殺したとして、殺人罪に問われている事件。26日から公判が始まった。

  検察側、弁護側双方によると、被告人は被害者が家庭より交遊を優先することに、被害者は被告人に対して生活上の不満を持ち、夫婦仲を修復できないまま事件の日を迎えた。

  27日の証拠調べでは、検察側から被告人の姉、被害者の子らの供述調書が読み上げられた。「子ども3人は父母を一度に失ったようなもので不憫(びん)でならない。特に三男が不憫でならない。三男の心の傷は計り知れないほど大きい」と、姉が供述調書に語った親族の心境が読み上げられた。

  長男は供述調書で「母を殺した恨みと悲しみが交じり、(親への)感謝の気持ちと父への恨みと悲しみが交じった気持ちを抑えられない」、二男は供述調書で「なぜ父が母を殺さねばならなかったのか知りたい気持ちはあるが、これ以上知りたくない」などと語っており、深い傷が浮き彫りになった。

  供述調書によると伊藤被告は「わたしの愛情を踏みつけにしたことが悔しく、許せない。これ以上好きなことはさせない」と殺意を抱いたという。結果の重大性については「3人の子どもが妻を殺すことをどう思うか、頭になかった。妻を刺し身包丁で殺そうと思い、細長い方が刺さりやすいと台所から一番細長い物を出した。逮捕されると思った」などと述べられた。

  弁護側は被害者と交際していた遠野市の会社員男性の供述を読み上げた。男性は2001年から被害者と交際し、盛岡市や北上市で密会して事件まで不倫を隠し通していた。

  事件直前に被害者から相談を受け「だんなが怖い、目つきがおかしい。荒声を出したことがないのに出した。行動が読めない」と聞いていた。

  事件の原因について「わたしと被害者が関係を持ったことを原因とするかどうかわたしには分からない。被害者が亡くなり悲しい」と供述している。

  証人尋問で長男は傍聴席の最後列からマスクを付けて入廷し、証言台に立った。事件後に被害者の不倫を知ったことを踏まえ、弁護側の「どちらが悪いと思うか」との質問に、「どちらが悪いとは考えていない。どちらも悪い」と苦しい胸のうちを明かした。

  休廷をはさんで裁判員の男性が質問した。佐々木裁判長は名前が特定されないよう番号で指名。男性は「事件前の父親への気持ちは」と質問した。長男は「優しくても怒るときは怒る思いやりのある父だったと思う」と回答し、ほかに質問はなく閉廷した。

  公判後、盛岡地検の中川一人次席検事は証人に対して「両面ある部分にかなり気を遣う。父母がいなくなり一人ぼっちになってしまったので、(兄弟の)少年に悪影響を与えてもいけない」と、検察側の配慮を示した。

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします