2010年 1月 28日 (木)

       

■ 〈北Gのライブトーク〉124 北島貞紀 「啄木入門しました」

 「一生のうち1冊くらい啄木を読んだっていいじゃないか」そんな単行本の帯にひかれて、松田十刻氏の「26年2か月|啄木の生涯」を購入した。郷土の誇る、2大ブランド、大スーパースターであるが、もう一方の雄、賢治に比べると、地元の人気はいまひとつの感がある。そう言いつつ恥ずかしながら、その作品も、生涯もあまりよく知らなかった。

  早熟で高慢な文学の天才、借金の常習者、絶対友達になりたくないタイプというのが、僕のもっていた啄木のイメージである。(啄木ファンの皆さん、ごめんなさい!)

  おかげさまで、啄木の生涯の概要を知ることができたが、本人へのシンパシーを持つことはできなかった。盛岡中学の退学に始まり、節子との婚約、結婚以降の生活苦、貧困は、啄木自身のいわば、自分の蒔(ま)いた種である。そして、それを解決するために借金を重ねる悪循環。

  しかし、この借金の仕方が半端ではない。あらゆる機会をとらえて、四方八方に手を尽くす。これは非凡である。凄(すご)みさえ感じる。そして、その総額がなんと、1400万円(今の価値)である。

  啄木の天分は、言語の習得能力の高さだと聞いたことがある。ようするに言語を自由自在にあやつれる、いわばすご腕のピアニスト兼作曲家である。だから「東海の小島の磯の白砂にわれ泣きぬれて蟹とたはむる」なんてキャッチーな詩を詠んだり、背負いもしないのに「たはむれに母を背負いてそのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」と心に訴えかけてくる。まるで映画「アマデウス」に描かれる、モーツァルトのようだ。

  鮮やかな文学の世界構築に比べて、現実の社会への対応は稚拙である。そのアンバランスさが魅力というには、僕はもう年をとりすぎたようだ。

  ミステリー作家の北森鴻氏の訃報。蓮丈那智シリーズが好きだった。合掌。


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