2010年 2月 2日 (火)

       

■ 〈風のささやき〉15 重石晃子 雪山の魅力

     
   
     
  坂道の多いこのあたりは、雪が降ると全く要注意である。雪道で転んで、足首を折った経験がある私は、雪が降ると大困りだ。しかし次の絵の構想が出来ると思えば、とてもうれしく、雪を恐れてはいられない。

  3カ月ばかりの雪の季節は、山に囲まれた盛岡にとっては魅力的な月日でもある。晴れた冬日に近くの山を見上げれば、まるで紗の着物をまとったように雪が木々の間に透けて見える。落葉樹が多いのかも知れない。

  山はまるで女神が薄物をまとって立っているようで、実に神々しい。何層にも重なる山々の稜線は、そのまま絵の構成になるほど変化に富んでいる。

  針葉樹林の塊は所々黒点のように濃緑に見える。その黒点は白い雪のアクセントとして、自然が用意してくれたと思える程的確に存在して、ただただ驚かされる。ドキドキする程に心が騒ぐ。

  雪道を歩けないのに、雪山を描きたいとは何たるわがままなことかと、我ながら笑ってしまうのだが、雪山の魅力には勝てないのだ。

  私は最近になって、山の面白さを絵にするようになったが、かつて山は私の行動を制限する保護者のようであった。朝夕美しいと思いつつも重苦しい存在で、どこにいても山は見えた。

  盛岡は盆地なのだから当然のことではある。愚かなことに、次第にここから抜け出したいと、思うようになった。でも何も知らない若いときには、思い切って外の風に吹かれるのも良かろうと両親は言ってくれた。

  首都圏に住むようになって、近くの山に登って見ると、文明の車の道はすぐそこで、落胆させられたことがあった。山のないフランスにも行った。見渡す限り、地平線まで続く麦畑である。憧れは山の彼方ではなく、麦畑の彼方にあった。しかしどこか落ち着かない。浮き草のように足元のふらつく学生でしかなかった。

  比較の原点はいつも自分の郷里なのだと、今、雪山を見つめながら気が付くことである。
(盛岡市在住、画家)

本ページ掲載内容の無断転載を禁じます
ホームページに関するお問い合わせ、取材に関する情報は
E-Mail:hensyuu@morioka-times.com
盛岡タイムス宛てにお願いします