2010年 2月 16日 (火)

       

■ 〈保阪嘉内の短歌〉121 望月善次 ポプラーも窓の硝子も

 ポプラーも窓の硝子も暮れ果てゝ試験
  管さへ白く濁れり、
 
  〔現代語訳〕(窓の外の)ポプラーも窓のガラスもすっかり暮れて、(目の前の)試験管もまた白く濁っているのです。

  〔評釈〕「鴉と空」六首〔『アザリア』四号(大正六年十二月十六日)〕の五首目の作品。「ポプラー」は、「ポプラ、ハクヨウ」のこと。英語のつづりは「poplar」であるし、発音としては、最後の「r」音は弱いものだが、発音される場合もあるから、当然「ポプラー」もあり得るわけであるが、そうした語学的な問題より、五七五七七の短歌定型の初句五音との関係こそが重要ではないかというのが評者の見解。作品的に注目したのは、話者の視線の展開。まず、窓の外の「ポプラー」に着目し、次いで窓の「硝子」に着目し、さらに視線を目の前の「試験管」に転じているわけである。(こうした、視線の転換は、賢治短歌の特徴の一つであったことも付け加えておこう。)白く濁った試験管というのは、もちろん、試験管自体が白く濁ったのではない、試験管の中身が白く濁ったのである。良く知られている「化学実験室」を挙げるまでもなく、農芸化学を学んでいる嘉内に相応しい光景だと言えよう。
(盛岡大学学長)

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