2010年 2月 17日 (水)

       

■ 〈芸能ばんざい〉20 飯坂真紀 川前神楽

     
   
     
  「かんじんな事は目に見えない」と小説家サンテグジュペリは書いた。でも見えるときだってあるんだ。

  岩手山神社祭の神楽で、最後に舞手が持っていた弓をメリメリッと二つにへし折るのを目の当たりにした時、これを忘れてはならないと思った。それが川前神楽との出会いであり、その後に方々の神楽を追いかける源の一つにもなる経験だった。知識や理屈ではなく、直感による刻印は深い。

  その後、川前神楽に若いメンバーが増えていき、次第に演目を復活させていく経過を見せていただけたのは幸運だった。真っ白なしっくい壁の蔵の新築を祝うために行われた、柱固めの儀礼を拝見したこともあった。

  権現様がお囃子とともに家のぐるりを回りながら四つ角を噛み、歯を打ち鳴らして火災や地震などの災いを除けるのである。

  川前神楽ではずせないのは、四十四田ダムとの関係だ。1968年に竣工となった四十四田ダムによって、かつての川前の集落は大半が水の底に沈み、人々は住み慣れた土地を離れて離散した。バラバラになったメンバーが一つの集団として神楽を継承していくためには、強い意志とたいへんな努力が求められたことだろう。

  今も続けられている貴重な行事として、川前地区の家々をまわり、屋敷神を神楽で祈とうして歩く習慣がある。この秋の行事を見学させていただいたことがあった。知らなかった所に田畑が広がっていたり、今では隠れ谷にも見える道の途中にお社があったりと、人の生活圏が時代によって変わっていくことを実感し感慨深かった。

  来る21日には滝沢村の郷土芸能まつりが行われる。チャグチャグホールに足を運べば、同系とみなされる同じ滝沢村の篠木神楽との比較も楽しむ事ができる。

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  【川前神楽の主な予定】滝沢村郷土芸能まつり2月21日(日)、盛岡市岩手山神社例大祭7月第1土曜日、滝沢村柳沢岩手山神社例大祭8月第1土曜日ほか。

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